ブル君だって良くないよ
何だかんだあり即死モード継続中。
「そうだ神様。このルーレットやっぱりおかしいよ」
「文句を言うな未熟者めが! 」
「だって八しか止まらないなんて壊れてるかただの詐欺か…… 」
「馬鹿者! 神が詐欺ってどうする? お近くのキャッチャーではあるまいし」
「それはいくらなんでも言い過ぎっすよ」
「いいかよく聞け。あれは操作されてるぞ。気をつけるんだな」
はあ? 何言ってるんだろうこの人?
爺の戯言を聞き流す。
「確かに…… なら壊れてるんですよやっぱり」
「うむ。検討しておこう」
「はあ…… 」
「そんな顔をするな。一緒に沐浴をしようではないか」
神と一緒に沐浴。ある意味一番神秘的かもしれない。
「ではまた今度にでも」
付き合ってられない。
「そうかつれないな。ではこの者たちとではどうだ? 」
お姉さま方の集団。
うーん。悪くはないけどどうせリザに邪魔されるだけ。
これは呪いか何かだろう。
別れて再び運命の追放タイム。
もしかしたら今回はいけるかもしれない。
部屋に集められる。
「良いか皆の者。役立たずは連れていけない。
魔王の脅威にさらされている今だ。引き締めてかかるように」
「はい! 」
「では三名を選ぶ。まず昨夜姫様を覗いた不届きもの二名がここに居る」
「俺は関係ない」
「兄ちゃんどうしよう」
「この通りまったく反省してない。これでは連れてはいけない。
ここでお別れだ。残り一名をお前たちで決めて欲しい」
こうして今回は楽勝ムードだったが……
多数決で大飯ぐらいのブルが選ばれた。
彼のせいで皆の分の食事が行き届かなくなってしまった。
ブルの情報は特になし。
これだけ喰って太っているのだから貧しいことはないだろう。
村から役立たず認定されここに連れて来られたと見た。
村の負担にもなるから一石二鳥とも言える。
「オラ悪くねえだ。腹が減ったから食っちまっただけだ」
そこを我慢するのが村の為国王の為。果ては自分の為になる。
そのことを理解しようとしない彼は追放されるにふさわしい。
さあこれでようやく試練から逃れた。
後はベビーモードにさえなれば俺の実力なら勝ち抜けるはずだ。
パチパチ
パチパチ
追放官が拍手を送る。
「よろしい。では三人は私に着いてきなさい。ここまでの報酬を払ってあげよう」
そういつもこの手で油断させて餌場に送り込む。
彼を信用してはならない。決して信用してはならない。
まあ今回は傍観者だからいいんだけどね。
「ちょっと待ってくれ! 」
騒ぎ始めた。まったく身の程を知れと言うのだ。
ただの役立たずではなく二人は覗きを働いた許し難き存在。
ブルだって皆に迷惑をかけた。今回の決定は妥当だ。
「俺反省したよ」
「兄ちゃん僕も同じさ」
「うるさいぞそこ! 」
追放官からお叱りを受ける。
「最後まで話させてくれ」
「だからそれは後でいくらでも…… 」
追放官の鋭い視線が刺さる。
「俺がやりました! 覗いたんです。姫の着替えを覗きました。
どうかどうかお許し下さい! 」
「兄ちゃん俺も」
「ごめん皆。迷惑をかけた。俺たちのせいでみんなに嫌な思いをさせた。
謝っても謝っても許してはくれないだろうけど一つだけ言わせてほしい」
「まったくお前らは…… 」
追放官も呆れてしまった様子。
何かやばくないか? 凄く嫌な展開。
彼らを早く黙らせないと最悪なことが起こりそうでならない。
思い過ごしだといいんだが。
即死モードは伊達じゃない。
「俺たちが悪かった」
「兄ちゃんも悪いけど僕も悪かったんだよ」
二人は慰め合う。
よしここまでだ。これ以上はだめ。情に流されてはいけない。
ほら早くしないか。追放官は何をやってるんだ? この役立たず。
ついつい思ってもみない本音が爆発する。
「俺たち三人がいけないんだ…… 」
ついに人数を言ってしまう。
「ブル君も確かに良くなかったね。うん。三人ともダメじゃないか! 」
ついつい早く終わらせようと口を挟んでしまう。
「何を言ってんだよ。お前だって一緒に覗いたろ? 」
「俺? 」
「そうだそうだ」
仲のいい兄弟による最後の悪あがき。
「俺は関係ないでしょう? 巻き込むな! 」
「いやお前と兄ちゃんが始めたことだ! 」
「いや違う! お前の兄が始めたことさ」
「違う! 違う! 」
「何が違う? お前ら二人で誘ったんだろきっと? 」
俺には壁に登る前の記憶が無い。当たり前だ。ワープしてきたのだから。
誰が誘ったとか詳細は分からない。
ただ余計な一言を発した気がする。
このままでは俺の立場が危うい。
続く
⑤