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即死モード継続中 爺沐浴中

ギャン

ギャン


涎を垂らした狂犬が向かってくる。


キャン

キャイーン


水たまりを異常に恐れる犬。目つきも異様。何かある?


「まったく餌も与えてないのかよ。ほらシッシシ」


いくら追い払っても威嚇を止めない。犬に続き見張りもやって来た。


絶体絶命のピンチ。万事休す。



暗ければ誰か分からずに言い逃れもできるが捕まってしまえばお終い。


何らかの処罰を受けることになる。たぶん百叩きか鞭打ちだろう。


ちょっとした拷問。再起不能で追い出される。


ただここで捕まっておけば化け物に食われることはない。


だからわざと捕まりゲームオーバーになるのも悪くない。


いやそれどころか理想的だ。


だが俺はこの物語の主人公。


プライドに賭けてそんな選択はできない。


物語が続かない。


どうする? どうしたらいい?


アプラッチを作動しても反応が無い。


怒らせてしまったか? それとも単なる故障か?



ワンワン

ギャンギャン


これはまずい。襲い掛かるつもりだ。


どうする? どうする?


ポケットを探る。


捕まる前に逃げねば。


間合いを測りだした狂犬たち。合図と同時に飛びかかる気だ。


くそ仕方ない。最後の手だ。


これだけは使いたくなった。


できれば自分の力でこの場を切り抜けたかった。


エスケープ発動。


包囲網を掻い潜る。


何とか部屋に戻ることができた。


おやすみなさい。


今夜のことは忘れて眠りにつく。



翌朝。


ふああ


欠伸が止らない。


出発の挨拶を終え姫を連れ旅立つ。


例の橋に差し掛かった。


今回は巻き込まれたくないので姫の近くをキープ。


確かここなら安全のはず。


「ふふふ…… 昨夜は大変でしたね」


何と姫自ら話しかけてくださった。感動だ。感動する。


今の俺の気持ちをどう表現していいか分からない。


夢心地とでも言えばいいのか。本当に有難き幸せ。


言葉の意味を気にかけることもなくただ恐縮するばかり。


頭を掻きへらへらする。


「よくお逃げになりましたね? 」


「はい姫様? 何でしょうか? 」


「ふふふ…… いいわ。あなた覚えておくわ」


まったくこの姫ときたら俺を脅そうとしやがる。恐ろしい女だ。


作り笑いでどうにか乗り切る。


しかしまさか昨夜のことを言ってるのか?


どうやって知り得た? 俺と視線が合ったのは一瞬だ。


確かに運命的な出会い方だったけど俺を見分けるなんて不可能だろう?


まさか視力がいいのか?


それとも夜目が利きすべて分かった上で泳がせていた?


もしそうならとんでもないお姫さまと言うことになる。


ただの可愛いお姫さまなどと侮れない。



ぶつぶつ

ぶつぶつ


動揺を悟られないようによくシミュレーションする。


きゃあ!

うおおお!


もう、うるさいなあ。何だよこんな大事な時にさ。


橋が崩落したことにも気づかずに歩みを進める。


ミュウ

ミュウ


変な鳴き声がする。不快レベルを超えている。まあいいかどうだって。


姫を連れて無事目的地へ。



恒例の爺探しスタート。


えっと師匠はどこかな。


村では単独行動が許される。


この間にアイテムや武器などを揃えるのが一流の冒険者。


俺は爺探しに没頭する。実際はそんなにしたい訳じゃないよ……


アプラッチを作動。


えっとこの近くだな。よし。



泉で沐浴しているお姉さまたちに目が留まる。


ちょっと聞いてみるか。


「すみません。この辺りに爺さんを見ませんでしたか? 」


俺は何て大胆なんだ。突撃しているではないか。


まあ彼女たちの方が遥かに大胆ではあるが。


「あら坊や。ここは男子禁制よ」


「もうしょうがないはねえ。どこの子? 」


俺をガキ扱いする困ったお姉さま方。


聞く相手を間違えた。ここは立ち去って……


お姉さんに手を振って戻ろうとした瞬間。違和感に気付く。


この世界に相応しくない白髪の女性がいたのだ。


お姉さま方の団体には見ないタイプの人。


まさか保護者でもないしな。


思い切って白髪の人に声をかける。



「何じゃお主か? 」


白髪の爺が現れた。


「せっかく心を清らかにしていたと言うのに邪魔をしおって。


まあ良い。それでどうした? 」


「神様お願いです。どうか俺をベビーモードにしてください」


「無理を言うな! お前の運命はお前が決めるんだ。さあこれを」


お馴染のルーレットを取り出す。


「またこれ? 」


「文句を言うな! 運命のルーレットを回してみろ」


格好つけたつもりなのだろうがなんだかこなん。


「お前はまだいい方さ。これを回したばっかりに小さくなった奴も居た」


「小さく? こなん? 」


「ああ、若返ったとも言えるがな。どうするそっちにするか? 」


「結構です」


これ以上余計なのは御免だ。爺の口車に乗せられてまた地獄を見た日には……


「では回すがよい! 」


運命のルーレットを回す。


「はいおめでとう。八番だよ。えっと即死モードかな。残念。次頑張ろうね」


まったくしらじらしい。分かってるじゃないかまったく。


安定の即死モード。


まだまだ継続中。


                  続く

                  ⑤

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