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困った兄弟

夜遅く。


フフフ……


随分リラックスした様子で窓の外を眺める姫。


「おい押すなよ! 」


「押すなって! 」


「そっちこそ。振りのつもりか? 」


「俺は良いんだって! 」


近い近い。もう目と鼻の先。


この窓を開ければ姫の唇を奪うことができる。



「おい押すなって! 」


「だからお前だろうが! 」


月明りに輝く美しき少女。姫と言ってもまだ幼い。俺たちと変わらない。


まだ胸だってないし体つきは幼い。


でも月明りに照らせばそんな姫でも輝くのだから不思議だ。


俺は一体ここで何をしてるんだ?


覗きなど下衆のすること。


俺には…… ダメだ抗えない。


「よしそこそこ」


「うんいいぞ。いいぞ」


「なあ、お前ら俺たちは何をしてんだ? 」



目を覚ますといきなり壁。後から押されるままここまで来ちまった。


後悔してる。反省だってしてる。


「うるせいな! 黙ってろって」


「だから俺たち…… 」


「もう意気地のない奴だな。いいか男になるんだろうが! 」


どうやら彼の発案らしい。


まったく国王に招かれ任務を授かったと言うのにまさかの覗き。


男の風上にも置けない奴だ。隣の奴も見覚えあるぞ。


こいつら兄弟じゃなかったけ。


えっとライト?


いや違うな。


チハラ?


うーん。ダメだ思い出せない。


俺を巻き込んだ変態兄弟。まったく勇者にあるまじき行為。



「おお。見える見える! 」


「早く代わってよ! 」


息のぴったり合った二人。嫌らしい目に荒い鼻息。


思い出した! 日照り村のアッチ一家だ。そこんとこのバカ息子。


俺の村の協力もあって日照り続きの村に雨が降った。


詳細は覚えてないが今でも感謝の気持ちとして農作物を持ってくる。


「俺が先だ! 」


「僕が先に決まってる! 」


兄弟喧嘩が始まった。喧嘩の原因がどっちが先に覗くかだから情けない。


好きにしろよなまったく。こいつらと一緒にいると俺の株まで下がるぜ。



「おいお前そろそろ良いだろ。代われ! 」


生意気な弟。興奮して我を失っている。


「ちょっと待て! 落ち着けって! 」


彼らの村を救った恩義があるので優先的に登らせてもらい特等席も譲ってくれた。


そこまで求めてないんだけどなあ。


「ほらもういいだろ? 」


弟が突っかかる。


スペースが無く。ギリギリ二人までしか一番上に行けない。


俺と兄貴が上に。弟は我慢するしかない。


ただ我慢できるぐらいなら覗きなどやっていないだろう。


嫌な予感。


無理をすれば三人とも大怪我。


命がけのミッション。



「おい無視するなよ! 兄ちゃんも何とか言ってよ」


弟が我慢の限界。


「分かった。代わるよ」


別に俺も本当は興味が無い。


だけど怖いんだ。いくら月明りとは言え自分がどうなっちまうか。


へへへ…… おかしいだろ? 男って奴は皆こうさ。


などと格好つけたものの実は高所恐怖症。勇者にあるまじき欠点。


いや今この行為こそがあり得ないのだが……



お付の者が出て行きついに姫が一人になる。


「さあ一人だぞ。何をする? 」


兄が実況を始める。


まあ俺も心の中では同じようなことをしているが。


「さあさあ」


興奮した弟が無理矢理登ってくる。


姫が服に手をかける。


そして次の瞬間暗転。


あれ?


アプラッチが作動。目に保護フィルムが。絡まって取れない。


これはリザの仕業。まったく余計なことしやがって見えないじゃないか。


どうにか見えないか顔を振るが効果なし。


アプラッチを切る。


五秒後に視界が開けた。


ううん?


もうすでに着替えが完了していた。


惜しいことをしたか。


まあいいや。俺はそう言うの興味ないし。


負け惜しみだと分かっているがどうしても言い訳してしまう。



姫がこちらを見る。


一瞬、目が合った。


嬉しいような恥ずかしいような。


ただの村のガキが一国の姫と見つめ合う形。


何て幸福なのだろうか。天にも昇る夢心地。


その瞬間姫の叫び声が響き渡る。


えっと…… どう言うこと?


一瞬理解に苦しむ。


俺を見てくれたんじゃないのか?


俺を気に入ってくれたんじゃないのか?


俺を…… 俺を……


叫び声に慌てた二人がバランスを崩す。


うわああ!


そのまま落下。


静寂を切り裂く落下音。


一命は取り止めたもののその場を動けないでいる兄弟。


誰か回復魔法でもしてやれよ。


俺は弟がクッションとなり奇跡的にかすり傷で済んだ。


やはり普段の行いが良いからだろう。


だがこの後が大変。



ワンワン

ワンワン


ほらやっぱり来たよ。


                  続く

                  ⑤

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