今回のかわいそうなお客様は……
アイネ村へ到着。
さあ再び始まる追放ゲーム。
もう慣れたとは言えあまりにも理不尽。
俺たちが何をしたって言うんだ?
ただ騙されて連れて来られただけ。
いくら役立たずのクズだからって切り捨てていい訳じゃない。
ゲームスタート。
「今夜のお客様はこちら。
フーゴさん。ウエスティンさん。最後にアモ―クスさん」
そう俺のことだ。まるでお遊び。ふざけている。
こんなアホなことをしているのはベット。
隣の隣のもっと先の村出身。
彼が今回の決定者。
追放官は自分の手を煩わしたくないものだから代わりにこいつにやらせている。
まさかまた俺が……
ミャアミャア!
ミュウミュウ!
ギャアギャア騒いでるのは橋で出会った奇妙な生物。
いつの間にかその辺の勇者と入れ替わってしまった。
俺がいくらそのことを指摘しても聞く耳を持たないのだから呆れる。
もしこのまま行けば魔王と連絡を取りこちらの情報が筒抜けになってしまう。
王子の所までサーマ姫を無事にお運びする計画を危うくする愚行。
「よしそれでは三人は着いて来い! いいところに連れて行ってやる」
またこのパターン。いい加減飽きたよ。いつまでやらせるつもりだよ。
今回もイシコロ村から俺とウエスティンが順当に選ばれた。
もはや常連と言ってもいいだろう。
フーゴを選択したのは謎だがたぶん気に食わなかったのだろう。
頭がよく物知りでライバルになると判断したとも言える。
いくらクズの集まりでもその辺の感覚は持っているのだ。
まあ俺たちは本当に使えないと踏んだのだろうが。
いつになったらその誤解が解けるのか。
何度も化け物から逃げ切った実績はこの世界ではもちろん反映されない。
いつまでたっても役立たずの評価。
ウエスティンはここまで来れば本物だろう。
運の悪さもこの俺に匹敵する。だからかわいそうだと思ってしまう。
必ずすぐに選ばれ化け物の餌食になるある意味名人芸。
悲惨な星の下に生まれたに違いない。
またまた追放の憂き目に遭う。
運命とはそう言うものと諦めるのが肝心か。
「あーあ。こうはなりたくねえな」
どこからか飛んだ言葉。まったく人の気も知らないでいい気なものだ。
勝者の余韻って奴か。情けなくて仕方がない。
「おい何をやってる。早く行くぞ! 」
三人はお決まりのコースを辿る。
フーゴは初めてだろうがウエスティンは今回で何度目かだ。
いい加減自力で逃げて欲しいものだ。もちろん覚えてるはずはないがな。
「おい二人ともいいかよく聞いてくれ」
追放官に聞こえないように音を抑える。
「俺に着いて来い。そうすれば救われるぞ」
「ははは! 何を訳の分からない事を言ってる。ただ村に帰されるだけだろ。
今回は運が悪かったと諦めて大人しく村に帰るさ。
次回同じようなことがあればまた参加するつもりだ。お前らともここまでだ」
フーゴはこの後のことを知らない。
もちろんウエスティンだって知らない。
俺だって自分の記憶を疑っている。
だが必ず悲劇は起こるのだ。
「黙って聞いてくれ! 」
「いい加減にしろ! 」
知識もあり常識もあるここには珍しいタイプのフーゴは頭から否定に掛る。
「俺だってそうだったらどれだけいいか。だが村に帰るには試練がある」
まあまだ村には帰れたことはないのだが。
「嘘だ! 嘘に決まっている! そんな話聞いたことが無い」
フーゴは興奮。せっかく音を抑えていたと言うのに無駄になってしまう。
「そこ私語は慎め! 」
「しかしこの男が我々は殺される、捕食されると言うんです。違いますよね? 」
追放官は黙ってしまう。
それが答えだと言うのにまだ続けるフーゴ。いい加減諦めればいいものを。
執行官と合流。
皆外へ。
「フーゴ君済まない…… 」
追放官は罪悪感からか謝罪の言葉を述べる。
「これより別れの挨拶を行う。一人ずつ言い残すことはないか? 」
「ぜひまた挑戦したいです! 」
フーゴは情熱的だ。
「汗が止らないんです。おかしくありません? 」
ウエスティンは汗の掻き方で異常を察知。だがそこまでの頭はない。
「もういいよ」
今の俺の偽らざる気持ち。
「では執行だ」
再び翼の生えた化け物と追いかけっこ。
ああやってられない。
今回も早々に即死モードを引いた。
これは仕方ないこと。でもなんか変なんだよな。
あのルーレット。八にしか止まらないしそれに……
独り言を言いながらワープゾーンへ。
今度も他の者を救うことはできなかった。無念。
意識を失う。
続く
⑤