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三度目の正直

ウエスティンは自分の正体に気付かずにただ汗を垂らしている。


やはり俺が知らせるべきか? それともこのままただの従者で居させるべきか?


どちらが正しいんだ? うーん。どうすればいいんです師匠?



「姫様! この者は裏切り者では? 私に立て突いた男ですよ」


サーマと話してるのはまさかの偽サーマ姫。


自称サーマ姫でサーマとは似ても似つかない。


「おばさんふざけんな! 」


つい下品にも罵ってしまう。


「落ち着いてアモ。この人は私のお付きの者。自己紹介を」


「私はサーマ姫の教育係。姫様が不安がらないよう同行致しました」


「それでおばさんはなぜサーマの振りなんか? 」


「もうアモ! 失礼でしょう」


「どんどん魔王の手下が入れ替わるものでもうどうにもならず……


信用の置ける者を連れ隊から離れるよう進言。新たに策を講じました。


魔王がいつ攻めてきてもいいようにと姫様と入れ替わったのですが……


つい姫様が心配で来てしまいました」


心配性のお付きの者。



「俺まで騙さなくてもいいのに…… 」


「あなたが誰か存じあげておりませんので」


確かにサーマと仲良くなったのはルーレット旅を通じて。


それまではただの護衛の一人。仕方ないか裏切者もいるのだから。


「さあもう寝ましょう。明日最後のポイント。アンデルセントール。


ここを抜ければついにウエスト王国よ」


「サミー分かったよ。おやすみ」


「おやすみアモ」


「あの僕もいるんだけどな…… 」


ウエスティンが吠える。


隠れ王子とは言えこの扱いはかわいそうな気もする。


ただこれがウエスティンの真骨頂。存在感がないのが個性。誰も真似できない。



護衛はウエスティンの他に五名。


あまり人が多すぎると怪しまれ作戦に気付かれる恐れがある。


だから危険は承知で僅かな護衛のみで行動している。


先行隊で安全が確認されてから動くので今のところ問題は起きていない。


ただ内部で不穏な動きが目立ち始めている。


今回の作戦に気付かれるとしたら恐らく内部からだろう。



さあ寝るとするか。あまり居心地が良いとは言えないが。


埃っぽく床が抜けて砂まみれ。


不衛生でこんなところにサーマを寝かせるなんて間違ってる。


蛇は追い出してよね。毒蛇じゃなくても第五世界でトラウマになっている。


果たして本当にこんな状況で眠れるのか?


夜は更けていく。



朝。


「起きてアモ。動けないじゃない」


サーマの声がする。


昨日のことは夢じゃなかった。


サーマと再会できた。ついでにウエスティンも。


「ごめん。寝ぼけてて」


「もうアモったら」


サーマの声がする。


あれどこから?


「もうどさくさに紛れて。もう甘えん坊なんだから」


優しく語りかけるサーマ。


俺はどうにかなってしまいそうだ。



うん……


いつの間にかサーマの膝枕で寝ていた。


爺でもなければリザでもない。


もちろん自称サーマ姫のおばさんでもない。


サーマだ。俺の女神様サーマだ。


サーマ姫の膝枕で寝れるなど俺は何て幸せ者なのか。


あーようやく願いが叶った。


三度目の正直って奴だ。



「さあアモ起きて。皆支度してる」


「もう少しだけ。今が一番幸せなんだ」


つい甘えてしまう。


サーマの言うようにウエスティン以外見当たらない。


これは逆にゆっくり行くのも手だろう。


「ほら早く起きて。もう出発の時刻よ! 」


「そうだよ。いつまで寝てるつもりなんだ! 」


珍しくキレ気味のウエスティン。もうすでに汗を垂らしている。


王子お静かに。嫉妬は見苦しいですよ。


あれ…… 何か違和感がある。


しかも寒気と言うか嫌な予感がする。


俺たちの親密な関係を邪魔しようとする何者かの気配。


まさか魔王? それとも手下?



クンクン

クンクン


何か臭うな。臭い。臭いぞ!


「どうしたのアモ? そんな真剣な顔をして」


「サーマは気付かない? 何かすごく嫌な予感がするんだ」


何だ一体? 俺は一体何に反応しているんだ?


まさか巨大アナコンダでも現れたか?


いや違うか。この臭いはもっとこう年寄り臭いと言うか……


加齢臭? 爺臭?


うーん何とも表現のしようがない。



「そんなことより起きてアモ。ふふふ…… 」


満更でもない様子。このまま続けるのもありかも。


「もう少しこうしてようよサーマ」


「二人とも早く! 」


ついに我慢しきれなくなったウエスティンが騒ぎ始める。


仕方ない。そろそろ起き上がるとしようか。


やっぱりあと一分だけこうしていたいな。



突然水の流れる音がする。


「ふう気持ちよかったわ。いや一時はどうなるかと思ったぞ。


うん実によいトイレであった」


そう言って歩いてくる男が一名。


呑気なトイレ研究家の爺の出現かと思いきや元神の爺だった。


                  続く

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