再会 変わり果てたサーマ姫
サーマ姫強奪作戦。
魔王による強奪作戦は護衛作戦と同時期に始まっていた。
まずは相手の動きを探る為に手下を送り込む。
さすがに勇者がサーマ姫にまとわりついていては手出しできない。
だから手下を紛れ込ませ様子を探る。
勇者と入れ替わることで護衛を減らし手下を増やす。
徐々に増やして行きついには二人に一人が手下に。
潜入している手下と連絡を取り状況を確認し急襲作戦を決行する。
今その準備が整ったところ。
「魔王様。手筈が整いました。ご命令ください」
「さあ皆の者準備は良いな? 」
「ミュウミュウ! 」
「よし出発だ! 」
「ミュウミュウ! 」
盛り上がりを見せる魔王軍団。
ついに動き出した。
魔王自ら指揮を執り手下に命令する。
「いいかお前たち。あくまで今回の目的はサーマ姫だ。
しかし邪魔をする者は容赦するな! さあ行くがいい! 」
士気の高まった手下を鼓舞させさらに熱狂させる。
ミュウ! ミュウ!
可愛らしい声で叫ぶがその実態はかなり凶暴でピンクや緑に黄色と色鮮やか。
一目でおかしいと気づきそうなものだがなぜか簡単に入れ替わる。
元々が役立たずの上に協調性がなく頭の回転も悪く仲間意識も低い。
村々から選抜された弊害により魔王の手下の侵入を許す結果となってしまった。
宿屋へ。
大騒ぎをする田舎者の集団を発見。護衛隊だ。ようやく見つけた。
俺たちがルーレット探しの旅の間にサーマ姫護衛隊は前進を続けていた。
メンバーは前回とほぼ同じ。馴染のある仲間と再会できるのは嬉しい。
ループを繰り返すことによって多少の記憶が残っているのか受け入れられる。
ただおかしな言動をする奴が何人かいる。
たぶん…… いや恐らく魔王の手下だろう。
「おおアモ―クスじゃないか。姿見せないから追放されたのかと思ったよ」
「おい仲間が帰って来たぞ! 」
「せっかくだ。一緒に呑もう! 」
歓迎を受ける。
「なあイシコロ村の奴は見なかった? ウエスティンってんだ」
「いや見て無いな」
「本当かよ? 」
ウエスティンが見当たらない。これは一体どう言うこと?
なぜウエスティンがいない。
「どうした? 」
「サーマ姫はどこに? 緊急の用事があるんだ」
サーマが無事か一刻も早く確認したい。
焦ってはダメだ。冷静に冷静に。怪しまれてしまう。
「ああ二階にいるが…… お前本当にアモ―クスか? 」
疑いの目を向けられる。
「ふざけるな! 」
ついカッとなってしまう。
「悪い。そうだ追放官が話があるそうだ。例の奴だと言えば分かるな? 」
恐らく再び追放されるのだろう。
だが今回は少なくても魔王の手下を追放すべきだ。
もう役立たずを追放してる時でない。
追放の話は後回しだ。とにかく今はサーマの安否。
果たしてサーマ姫が存在するのかさえ怪しいが……
二階へ。
サーマ姫には見張りがしっかりついている。
「何だお前は? 」
「サーマ姫にお話があります。緊急の用事なんです」
部屋に通される。
「私がサーマ姫です。どのようなご用件でしょうか? 」
心配性の見張りが中まで着いて来る。決して警戒を緩めない。
一体俺のどこが怪しいのか? ぜひ教えて欲しいものだ。
「まさか…… あなたがサーマ姫? 」
「はい。どのようなご用件ですか? 」
似ても似つかない大人の女性。たぶんサーマとは十以上離れているだろう。
サーマにお姉さんがいたとでも言うのか? ふざけ過ぎている。
これは一体どう言うことか? まさか世界が変わってしまったか?
俺たちが聖地フォレストに行ってからすべてがおかしくなったようだ。
「サーマ? あなたがサーマ姫? 」
「いかにも私がサーマ姫です」
「嘘だ! あなたはサーマなんかじゃない!
俺の愛しいサーマはこんなおばさんじゃない! 」
つい我慢できずに偽物だと指摘してしまう。
「無礼者! 誰がおばさんだ! 」
まさかこれが現実なのか?
俺は元の世界に戻り何を目撃してるのか?
師匠。俺は間違っているでしょうか?
これはすべて悪い夢であって欲しい。
「この無礼者を捕えよ! 牢屋にぶち込んでおけ! 」
自称サーマ姫のおばさんが命令を下す。
そうここでは姫の命令は絶対。
俺たちはたかが田舎の役立たず。
それに対してサーマ姫が事実なら雲の上の存在。
彼女の為に護衛をしてる訳で。逆らってはいけない。
「うわああ止めろ! 」
あっさり捕まってしまう。
おかしいな。ベビーモードのはずなんだけどな。
どこかで手違いでもあったか?
爺のことだからまだモード変更出来てないとか?
それならば即死モードは継続中。今の最悪の状況は納得できる。
「目障りだ早く引っ立てよ! 」
自称サーマ姫のおばさんを怒らせてしまった。
これはまずいことをしたかな。
続く