ルーレット完成
元の世界でルーレット探し。
ルーレット。ルーレット。爺が落としたルーレットと。
「あれお前はアモ―クス? まさかな…… 送り出したはずだが」
まずい厄介なのに…… この辺を縄張りにしているおじさん。
おじさんは子供たちに人気で特に女の子には優しくしていた。
俺もリザもよく遊んでもらった覚えがある。懐かしいな。
「アモ―クス。まさかお前やられちまったのか?
だからって俺の前に化けて出なくても。
俺はお前には手を出してないだろ? 祟る相手を間違えるな! 」
「おじさん! 」
「うわああ! 許してくれ。すべて月が悪い。俺にはどうしようもなかったんだ」
そう言うと走って逃げてしまった。
何を勘違いしたのだろう? 俺が化けて出る訳ないのに。
それに今は昼間。騒がしいおじさんだ。
「どうしたアモ―クス。知り合いか? 」
「はい小さい頃にお世話になったちょっと変わった方で」
そう言う意味では今も変わっていない。昔のままだ。
始まりの場所。
「おお懐かしいの。ここが初めてお主と出会った場所」
「師匠この辺に落ちてますよきっと」
「うむ。ではお主は左を儂は右を探してみるか」
えっと確か爺が野ぐそをしていた。そこには草むらがあって。
爺はそこで用を足していたんだから…… この辺かな。
「師匠! ルーレット! 」
「あったこれじゃこれじゃ! 」
草むらからついにお目当てのルーレットを見つける。
「さあこれですべて揃ったわ」
「師匠! 」
「アモ―クスや! 」
爺と一緒に喜びを爆発させる。
ルーレットが見つかった。
ミッションコンプリート。
ついに八つのルーレットがすべて揃った。
これで即死モードを回避できる。
俺たちの即死モード回避ルーレット探しの旅は一応の終わりを迎える。
後は仲間を見つけ出せばいい。
問題はリザ。
爺の言うように姫を魔王の手から守り王子に引き渡さなければやはり無理なのか?
しかしそうすると今度は守るべきサーマ姫が存在するかが問題。
サーマが居なければ物語はゲームオーバー。
「師匠どうしましょう? 」
元神の頼れる爺のはずだがどうも信用できないんだよな。
「うむ。よく聞くがいい。ルーレットはすべて揃った。
そしてついに元の世界へ。これは奇跡じゃ。
儂らは神に選ばれし戦士。何と感慨深いことか。
振り返ればあの時儂が野ぐそをしてそれをお主が…… 」
「師匠それくらいで。急いでるんですからね」
爺の長話も暇なら聞いてあげてもいいが今は生憎忙しい。
「よし。まずは姫護衛隊に追いつきサーマ姫を探すのじゃ」
ようやくまともな指示を受ける。
最初からこれくらい役に立ってよね。野ぐそばかりしてないで。
爺への不満が噴出する。
まあ聞こえてないからいいけど。
「サーマがそこにいるんですか? 」
「それは分からん。神のみぞ知る」
「だからあんたは神だって! 」
「いや儂は元神。今はしがない爺でしかない」
「ただの魔法使いでしょうが。まったく困った師匠」
「サーマ姫と合流すればそこには従者もいるであろう」
希望的観測を述べる。まるっきり信用できない爺。
一体どこにそんな根拠があるのか。知りたいものだ。
「サーマ姫と従者を見つければもうすぐのはず。
後は魔王の手から守り切る。
そして王子に引き渡せば完了。
さすればリザも術が解け元に戻るはず。
これは希望でしかない。
サーマはいないかもしれない。従者だって姿を消しているかもしれない。
それでも探し続けよ。これはリザだけの為ではない。
皆の為に探すのだ」
「師匠」
「急げ! もう時間がないぞ! 」
「時間がない? 」
「うむ。急がねば魔王の手下が随分紛れ込んでしまっている。
いつ襲われてもおかしくない。それはお主なら良く分かるであろう? 」
魔王の襲撃に遭えばただでは済まない。
「それで師匠。護衛隊はどこに? 」
「えっと…… 今は順調に進んでいるようだから第六ポイントを過ぎたところ。
今からならルピアを目指すとよかろう。先回り出来るはずじゃ」
「おお! さすがは師匠。頼りになる」
「これくらい当然じゃ。ただ何度も言うが魔王の襲撃に遭えばひとたまりもない。
奴らが仕掛けてくるはず。充分に警戒せよ! 」
どうも魔王の存在感が薄い。ただ忘れがちではあるものの最終目標。
弱点は教わらなかったがお助けアイテムもある。これなら楽勝でしょう。
「では行くがいい」
続く