元の世界 神から告げられる衝撃の真実
ウエスティンか……
「ウエスティンってどこかで聞いたことありません? 」
「いやうーむ。冗談? 」
うーん。どうも懐かしい気がするんだよな。
どこかで…… ダメだ思い出せない。俺は確かに覚えがある。
でもウエスティンが何者かどうしても思い出せない。
「師匠! どうかお教えください」
「お主の仲間ではないか! なぜ忘れられる? 」
「仲間? そうか従者ウエスティン! 」
そうだった。俺とウエスティンは同郷でメンバー。
どうしてこんな基本的なことまで忘れてしまったのか?
聖地・フォレストに行ってからどうも忘れっぽくなった気がする。
いや違う。元から居なかったように錯覚させられてしまう。
とても恐ろしいこと。だが俺にはどうすることもできない。
「まさかサーマまで忘れたのではなかろうな? 」
「そんなまさか…… 師匠も冗談がキツイ」
「ではリザは? リザはどうじゃ? 」
「俺の可愛い幼馴染。いつも優しく微笑んでくれる」
「やはり記憶が抜け落ち始めている。リザが可愛くも優しくもないのは実証済み。
さあしっかり思い出すのじゃアモ―クス! 」
「師匠も大げさだな。そんな悪口ばかり言ってると嫌われますよ」
「まさかお前らイシコロ村の民が月からの移住者だと言うのも忘れたか? 」
「ハイハイ。冗談きついよ。そんな話聞いたことない」
「まずいこれは秘密だった…… つい口が…… 」
「師匠ご冗談を? 」
「いや間違いない! お前たちイシコロ村の者は月から来た。
だからお前たちは月の子じゃ! 」
まずい喋り過ぎた。取り敢えず記憶を封印しておこう。
「あれ…… 師匠? 今俺たち何を話してましたっけ? 」
「従者ウエスティンのことであろう。忘れたか? 」
「そうだそうだウエスティンだ。まさか師匠すべて知っていたのでは? 」
「うん。何がじゃ? いやここに来るのは初めてだが」
すっとぼける爺。
その手が通じると思ってるのか?
「でも神の時には把握していたのでしょう? 」
疑惑を追及。
「しつこいぞ! いちいち細かいところまで見てるものか! 」
爺の意見はもっともだ。
自分が世界の中心だと思っている者が陥りやすい落とし穴。
でも俺主人公なんだけど? だから中心でもいいんじゃないか?
「それに今更奴の過去が分かってどうする?
従者は従者。それ以上でもそれ以下でもない」
爺の言い訳でしかない。要するに正論だ。
こんな時はきっと何か隠している。
爺とは長くやって来た。だから何となくだけど重大な事実を隠してる気がする。
「師匠はウエスティンをどう思いますか? 」
「うむ実に役に立つ従者であった。寡黙で儂には決して逆らわない。
出来ればもう少し体力があると嬉しいがな。まあそれも過去のこと。
お主がイシコロ村の仲間だと考えるのは良く分かるがもはやどうにもならない。
ただの不毛な話。さあ早くルーレットを探すぞ」
七つ目のルーレット。
これが最後のルーレット。
ルーレット探しの旅もここが終着点。
ただまだどこにあるか皆目見当がつかないが。
突如ぼやける。
世界がぼやける。
爺がぼやける。
俺自身がぼやける。
「師匠! これは…… 」
「儂にも分からん! 初めてのことじゃからな」
あれ…… ゴールドカードが反応している。
まさかこいつ俺たちをコントロールしてるのか?
「駄目です。もう限界だ! 」
「アモ―クス! 手を放すでない! 」
「師匠! 」
意識を失う。
あれ何か懐かしい感覚。
ううう……
「ほれ水じゃ! 」
ゴホゴホ
ゴボゴボ
うん。ここはどこ?
「何を寝ぼけてるか! 早く目を覚まさんか! 」
飲み水のはずがなぜかぶっかけられる。
せっかちで我慢の無い爺だ。本当に困った爺だ。
「あれ師匠? 何してるんですか? 」
「お主を目覚めさせようと色々試してみたがやはり水が一番効くな」
乱暴爺。風邪でも引いたらどうする?
「師匠! ご冗談はおやめください! 」
まったく加減を知らないんだから。
「おいそれよりここがどこか分かるかの? 」
爺は笑っている。まさか俺が知っている場所?
「ほれこれを食ってみよ。思い出すであろう」
真っ白のぼそぼそしたもの。
うんもしかして…… やはりサンドイッチ。
「リザ! リザいるのか! 返事をしろ! 」
見覚えがある。よくリザの家で食い物を漁ってたっけ。
食い物目当てに通ってたら親父さんが変な風に勘違いするから困ってたんだよな。
「落ち着けアモ―クス! リザが居る訳なかろう」
「でもここは元の世界。そうですよね師匠? 」
「うむ…… 間違いなかろう」
第七世界。即ち元の世界。
いや正確には第七世界は過去の世界。
そしてここは現在のイシコロ村。ついに元の世界に戻って来た。
だがそれでいいのか? どうもしっくりこないんだよな。
頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだ。
複雑な問題は俺には難しい。算数さえまともにできないのだから。
「どうやら儂はお主と出会った時にルーレットを落としたらしい。
だから最後の世界がここなのであろう」
「では第七世界は存在しないと? 」
「儂にも良く分からん」
おいおい元神の爺が分からないでどうする?
「分からないなりに推測できんこともない」
かなり慎重な爺。
「師匠。お聞かせください」
「うむ。たぶんじゃがパラドックスが起きたのではと」
「パラドックス? 」
パラドックスとは一体?
続く