第六世界クリア
ついに言い訳を始める往生際の悪い爺。
証拠はもう揃っていると言うのに本気で言い逃れできると思っているのか?
「師匠! 」
「アモ―クス。儂を信じろ! 決してお前を騙した訳ではない! 」
確かに爺の言にも一理ある。元の世界に戻れるかは微妙だった訳だし。
それは分かってるんだけどさ。でもそれでも酷いよ。
「私からもお願いします。老神様を許してあげて下さい」
畏れ多い神からの願いを無下にできない。
うまい手だ。ここは一旦引き下がるか。
「もうしょうがないなあ。それで神様ルーレットの方はどちらに」
目当てのルーレット。これでようやく六つ目が揃う訳だ。
「持ってきてあげなさい」
「えええ…… 持って来るんで? 」
不機嫌そうにするが取り合わない。
神官は仕方なく汚物付きのルーレットを持ってくる。
「汚い! 何て物を運ばせるんですか? 」
さすがに神には言えずに元神の爺に迫るが爺は意に介さない。
「おお、これじゃこれじゃ。ではまた来年にでも来るとしようかの。
それでは皆さんごきげんよう」
ご機嫌爺からの不吉な予言。
「もう結構です」
神官が拒絶するが神が招待すれば意味がなくなる。
神がまたぜひお越しくださいと無責任に言うものだから爺は行く気満々。
「ではお急ぎください。どうやら時間が迫ってるようですね」
「おおもうこんなに? ぐずぐずはしておれんな。行くぞ従者よ! 」
「違うって俺はアモ―クス。勇者アモ―クス。従者はウエスティンですって」
「どっちでも良かろう。さあ旅立つぞ! 」
ルーレットを手に入れ聞くことも聞いた。もうここに留まる意味はない。
さあ次の世界へ。
その前に。
「最後に一つよろしいですか」
改めて神に問う。
「急ぐぞ早くしろ! 」
爺に急かされる。
「魔王の弱点をお教えください。どのように倒せばいいのでしょうか? 」
さすがに魔王だけあって簡単ではないだろう。
それでも神ならば答えを知っている気がする。
何と言っても神様。知らないはずがない。
「それはノーコメントで」
神にすべて問うのは間違ってる。だが今は少しでも有利に働くよう情報が欲しい。
「おいおいケチケチせずに教えてやらんか」
爺が味方に回る意外な展開。
「まさか師匠も? 」
「いや儂は弱点があることしか知らん」
「お願いします。どうかお教えください! 」
「いやしかし…… 」
「一生のお願いです! 」
ついに神様に対しても禁断の手を使う。
「何という粘り。それでこそアモ―クス。儂が見込んだだけのことはあるわ」
爺から有難いお言葉を頂く。
「分かりました。弱点はお教えできませんがそのゴールドカードを使いなさい。
望みの結果が得られるでしょう。
ただ魔王を倒すにはその気にさせることが重要です。
それが出来れば間違いなくあなたは勝利を収められる」
神様からの太鼓判を頂く。
これで俄然やる気が出て来た。
「さあ行きましよう師匠」
「うむ良かろう。では新たな世界に向かうとしよう」
しかし誰も知らない。
爺が再びルーレットを置き忘れたのを。
「うわちょっと師匠。なぜ手ぶら? 」
「いちいち細かいの。おくそを垂れる時は開放感からついな。
またやってしまったか。ほほほ…… 気にするでない」
「うわ! 手を洗ってないでしょう? もう汚いなあ」
「何を抜かす! 神のおくそじゃ。神聖なものであろう? 」
「元神でしょう? 」
「まあまあ細かいことは良かろう」
ちっとも良くないがどうにか忘れ物をせずに済んだ。
この役割は本来サーマ。そしてリザ。
今は俺しかいない。爺の面倒を見るのは俺しかいない。
本当に大変だぜ。
「よし改めて出発じゃ! 」
「おう! 」
早く元の世界に戻りサーマとリザ。ついでにウエスティンを探さなくては。
神様に礼を述べ第七世界へ向かう。
しかしこの後のことを誰も知らない。
勇者アモ―クスによって倒された神官ジャスラ。
彼らが聖地・フォレストの番人であるならば結界は破られたことになる。
一度破られた結界はそう簡単に元に戻らずあらゆるものが侵入してくるであろう。
やはりいやしくも人間などが聖地フォレストに足を踏み入れるべきではなかった。
神官ジャスラを倒すべきではなかった。
このことに気が付けたのは元神の爺だけ。しかしつい報告を怠ってしまう。
こうして聖地・フォレストは侵入を許すことになる。
そして世界は混沌とし始める。
だがまだそれは遥か先のこと。
果たして最終世界には何が待ち受けているのか?
第六世界。聖地・フォレスト。神の森を制覇。
二人はついに第七世界へ。
続く
①