仲間の行方
ゴールドカードは思っている以上の効果があるらしい。
貴重なイベントアイテムでありお助けアイテム。
「では俺が生き残ったのは必然だと? 」
「はい。あなたは選ばれた人間なのです。自分に自信を持ちなさい。
聞くことはそれだけですか? 」
たまたま女神様からゴールドカードを頂いた。
それを俺が手に持っていたに過ぎない。爺でもサーマでもリザでもいい。
ウエスティンだってあり得た。だが俺が手にした。
このちょっとの違いで運命を分けてしまった。
俺が…… このパーティーのリーダーであり主人公でもあるのだから当然か。
本当に俺は選ばれたのか? ただ死神から嫌われただけに過ぎないのではないか?
自問自答するがはっきりした答えは出てこない。
「済まない。これ以上は言及できない。後はあなたの気持ち次第」
意味深な発言。一体神は何を隠しているのか?
「では最後に。仲間はどうなってしまうのですか? 」
「まったく聞き分けの悪い人だ。いいですかよく聞いてください。
彼らは天国にはいかない。これがどう言う意味か分かりますか? 」
まさかの地獄発言。土足で聖地を踏み荒らした者には罰が下る。
そう言いたいのだろう。恐ろしい限りだ。
「お願いします神様! どうか仲間をお助け下さい! 」
土下座する。仲間が救えるなら何でもする。これくらい安いものだ。
「およしなさい。それ以上は神でも応えられない」
困惑する神に縋りつく。
「どうぞ! どうぞお助け下さい! 」
これを繰り返す。力尽きるまで神に縋る。
情けないが相手は神だ。ただの人間の俺には神に頼るしかない。
「仕方ありませんね。無駄なことをしてると思いませんか? 」
意味深な発言と共に態度が軟化。
「本当に無駄で愚かしい者よ」
ついに見放されたか。
「よろしい。では特別に」
いや見放されていなかった。神はお見捨てにならなかった。
何と慈悲深い尊い存在であろうか。
「ありがとうございます! ありがとうございます! 」
もはや感謝の気持ちを素直に述べるぐらいしかできない。
「ここ聖地・フォレストは今までの世界とは違います。
神聖で決して侵してはならない領域。
そこに人間が立ち入ったのです。排除されるのが当たり前。
ただ排除された者は元の世界に戻される決まり。
どこからやって来たにしろ元の世界であなたを待っているのは間違いない。
だから心配しないでください。あなたが元の世界に戻れるなら特に問題ない。
ただ戻れない場合は残念ですが諦めてください」
神はすべてをお話になられた。
「おっと…… 口が滑ってしまった。これはまた老神様に何と言われるか。
老神様には内緒にしていただけますね? 」
「まさか爺…… いや元神はこのことを知っていた? 」
「もちろんですよ。ただそれをお伝えしてないのには訳があるのでしょう。
ですからこのことは黙っていてくださいね」
爺の思惑。ただ俺を意のままに操りたかっただけなのでは?
もしそうだとしたら許さない。
「では思い悩む必要はないと? 」
「はい。ですから無駄なことはおよしなさい。どれだけ不毛かお判りですか? 」
姿を消したものだからつい焦ったがそのシステムなら問題ない。
ただ一番気になるのはやはりそれをなぜ爺は隠していたかだ。
本人に直接聞くのが一番。
その張本人のご登場。
「ふう。すっきりしたわ」
快便だったようで晴れやか。
爺と神官がようやく戻って来た。
こうして神との貴重な二人の時間は終わりを迎える。
「そろそろ飯にしよう」
用を足したら今度は飯とは呑気なものだ。
ここまでふざけてると我慢できなくなる。
俺が苦しみ悲しんだのは何だったのだ?
いや違う。なぜ言ってくれなかったのか?
怒りが込み上げてくる。
これではもう爺を信用できない。
信用できなければ一緒に行動などできない。
もうパーティーだって解散だ。
「師匠! なぜ教えてくれなかったんですか? 」
爺は絶対に知っていた。それなのに教えようともせず見守るような真似を。
それが許せない。どうしても許せない。
「まあ落ち着けアモ―クス。確かにその通りじゃ」
悪ぶれることもなく言い訳に終始する爺。
「よく考えろ。元の世界に戻るには時間内にクリアしなければならない。
守れなければ結局再会することはできない。
よいか確率的には決して高くない。だから儂はお主を慮った」
「師匠はすべて知ってたんですね? 」
「うん。ううん…… 」
はっきりしない。
「いやあまりにも悲しんでいたからついその場の雰囲気で大げさに。
まさかここまでなるとは思ってもみなかったわ」
まだ言い逃れようとしている。本当に往生際の悪い爺。
証拠はもう揃っていると言うのにまだ言い逃れできると思っているのか?
困った爺だ。
続く
①