序章
神様は全員創作です。知識が浅いので被ってたら、コメント等で教えてもらえると幸いです。魔法とかも適当です。よろしくお願いします。
重厚な木でできた扉をノックし、中に入る。
「失礼します。お父様、本日の業務が完了致しました」
書類の束を抱え、執務机に座った父に、報告する。いつも通りだ。
そして、その書類を見た父が頭を抱え俯いた。
「お父様、どうなさいました?何か不備でも?」
「お前は、どうして……。人の気持ちがわからなすぎるぞ!」
バン!とたたかれた机がヒイィと小さく悲鳴を上げる。
「なんだこれは!」
父が見せつけてきたのは、一つの村についての書類。長らく、雨が降らず、飢饉に陥っている村のものだ。
「それがどうか致しましたか?きちんと手順に則り、現状維持としましたが……」
「ここの!ずっと、祈りを捧げているという!記述が!お前には見えないのかああああ!」
「いえ、見えます」
しかし、祈りを捧げたからと言って、雨を降らせることはできない。私は豊穣の女神だが、雨を降らせる能力はないのだから。
「ならばなぜだ。この村の、神への信仰心は最低まで落ちているのだぞ!」
「私に、気象を操る力はありません」
淡々と答える。私を神として祀っているのは、あの村人たちである。私を選んだ、彼らに責任がある。
「他の神に話を付ければ良いだろう。どうしてそう、融通が利かないのだ!」
「ユウズウ?」
「ああ、もう!」
父はガックリと肩を落とし、しばらく固まっていた。無言でそれを見ていると、突然父は呟いた。
「娘よ。一度地に行ってみるが良い。人にまぎれて暮らせ。そして、心を身につけろ……
大地の神、テイラの名において命ずる、っと。娘よ、少し地上に行ってこい。学校を手配したから、しばらくそこで暮らせ。人間の心が理解できるまで帰ってくるんじゃないぞ?」
はあ、とため息をつき、父がパチンと指を鳴らすと、大きな白い扉が現れた。少し不快になる装飾だ。おそらく、人間界への扉だろう。
「では、行って参ります」
扉は思ったよりも軽く開いた。
足を踏み入れると、ギュンっと引っ張られ、ずっと下へとおちていった。
「あー疲れたー!あーそーびーたーいー!」
ジタバタと暴れると、海の生物たちから、白い目で見られた。
『あるじ、あるじにはちゃんとした仕事があるのだから、それはこなすべきだと思う』
一番側近のイルカが言う。私を主と呼ぶ必要は無いと再三伝えているのだが、彼らはそれを改める様子を見せない。
「知ってるよ、それくらい!ボクにだって役目はあるよ?でもさ、でもさ、何万年もこの暇な仕事を続けてるんだよ?誰にも褒められることなく!いいじゃん、ちょっとぐらい遊んだってさあ!」
『しかし……」
「よし、決めた。ちょっと人間界で遊んでくる!ええっと、あ、この『魔法学校』?とか良さそうかも!これをこうして、ちょちょいのちょいっと!よーし、オッケー。じゃ、しばらく海は頼んだよ、みんな」
『え、ちょ、ま、待って下さいあるじ様ー!』
ざわざわと後ろの連中がうるさいが気にしない。海と同じ色の髪を靡かせながら、海の上を歩く。クルリと人間の舞台での舞のように回り、戸惑う彼らを見つめる。パチンと指を鳴らし、呼び出した扉から、人間界へと降りていく。何があるのか楽しみだ。
「お前はもういらない」「さっさと消えてしまえ」「無能が」
ごめんなさい。ごめんなさい。私なんて、もう生きる価値も無いと分かっているのに、こんな身だから、死のうにも死ぬことが出来ない。神になんて、産まれたくなかった。
「そうだ、墜とせば良いのだ」
兄が、思い出したかのように言うと、姉たちは皆賛同した。
「墜ちろ、 」
私に、彼らに逆らう権利は無い。力も無い。その必要も無い。
兄がパチンと指を鳴らすと、人間界への扉が開いた。白く、神々しい扉。きっと、私は楽になれる。無言で扉をくぐると、ずっと高いところから墜ちるような浮遊感に襲われた。
「…心地いい。このまま、死ねたら……」
重力に逆らわず、頭を下に落ちていった。