その身体は、汚されて
部屋の中には、ナルハンド含めて四人の男がいる。それは、なんとも異様な光景に見えた。
だって、全員が服を脱ぎ、下着だけになっているのだ。
これはダメだ、これはいけない……と、ローニャの中の危機管理が激しく警戒を鳴らしている。ここに、留まってはいけないと。
「あ、あの、わた……すみません、わたし……その、よ、用事を思い、出して……」
「ローニャ。……来るんだ」
「!」
後ずさっていた足が、止まる。その声に、視線に、逆らえない。
いつも見ていた、主の顔……それが今、ローニャにはとてつもなく、恐ろしいものに見えて。
だというのに……足は、動いてしまう。ただし後ろにではない……前に、だ。
「さあ、始めようかローニャ」
そして、ローニャにとって苦痛とも言える時間が、その日から始まった。ナルハンドを相手にしているときは、むしろ幸福が心の大部分を占めていた。
しかし、その思いは無惨にも、砕け散ってしまった。見たことのある程度でしかない男三人から、なぶられるように全身を触られる。男の、ゴツゴツした手が、気持ち悪かった。
何度も身体を好き放題にされ、ローニャはただ声を荒げるしかなかった。抵抗しようにも、所詮は女の力で、複数の男から逃げられるはずもない。
「かわいいよ、ローニャ」
いつものように、甘い言葉を囁いてくれるナルハンド。しかし、ローニャにとって幸せを感じるはずのその言葉は、もはや恐怖を感じるものでしかなかった。
四人の相手を、一人でするのだ。時間が早く過ぎることだけを望んでいたが、そもそもいつになったら終わるのかわからない。朝になっても終わる保証なんて、どこにもないのだ。
ナルハンドはいつもローニャの身体に触れているからだろう、他の三人に比べて触ってこようとはしなかった。代わりに、三人は容赦なく、ローニャの身体を触ってくる。
女性らしく、発達したその身体を。
「っ……っ!」
果たして、どれほどの時間が経っただろうか。いつしかローニャは、もう抵抗する姿勢すらなくなり、されるがままになっていた。それは、ただの人形とも言える姿だった。
そして、カーテンから差し込む光が、朝が来たことを教えてくれる。いつの間にか気を失っていたのだろう、目覚めたローニャは、痛む身体を引きずるようにして、起き上がった。
身体は、汚されていた。外も、中も……お腹の奥の熱さを、感じる。手でお腹に触れると、なにかが中にあるような感覚があった。
「……ぅ!」
昨夜から今朝方にかけて、記憶がよみがえってくる。たまらず込み上げてくる吐き気、口を押さえ、ローニャはトイレに向かった。本来、主であるナルハンドの部屋のトイレを使うなど、言語道断だ。
だが、今はそのようなことを気にしている暇さえない。
「ぅ、え、えぇ……!」
胃に溜まったものを、吐き出す。気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……!
涙が溢れてくるのは、嘔吐による苦しさからか、それとも別のなにかによるものだろうか。
「はぁ、はぁ……っ」
ようやく、吐くものがなくなり、嘔吐感が落ち着く。そのおかげだろうか、少しだけ、頭の中がクリアになった気がした。
そこで、ようやく部屋に、自分以外の人間がいないことを理解する。部屋の主であるナルハンドはもちろん、あの三人の男も。朝になれば部屋を掃除するはずの、他のメイドも。
そうだ、今は何時だ……仕事に、行かないと。でも、こんな格好で行けない。まずはシャワーを浴びて、身体を綺麗にして、着替えて……
いや、なんだか動きたくない。もうこのまま、眠ってしまいたい……もうなにも、したくない……
「う、うぅ……!」
再びこみ上げてきた嘔吐感。もう、胃の中にはなにも残っていない……だけど、嘔吐感を抑える術も知らず、ただただ吐いた。吐くものがなくなっても、吐いた。
流れる涙も、鼻水も、身体から流れ出るものはすべて……この気持ちさえも、すべて流れてしまわないかと、密かに願って……




