表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/26

その身体は、汚されて



 部屋の中には、ナルハンド含めて四人の男がいる。それは、なんとも異様な光景に見えた。


 だって、全員が服を脱ぎ、下着だけになっているのだ。


 これはダメだ、これはいけない……と、ローニャの中の危機管理が激しく警戒を鳴らしている。ここに、留まってはいけないと。



「あ、あの、わた……すみません、わたし……その、よ、用事を思い、出して……」


「ローニャ。……来るんだ」


「!」



 後ずさっていた足が、止まる。その声に、視線に、逆らえない。


 いつも見ていた、主の顔……それが今、ローニャにはとてつもなく、恐ろしいものに見えて。


 だというのに……足は、動いてしまう。ただし後ろにではない……前に、だ。



「さあ、始めようかローニャ」



 そして、ローニャにとって苦痛とも言える時間が、その日から始まった。ナルハンドを相手にしているときは、むしろ幸福が心の大部分を占めていた。


 しかし、その思いは無惨にも、砕け散ってしまった。見たことのある程度でしかない男三人から、なぶられるように全身を触られる。男の、ゴツゴツした手が、気持ち悪かった。


 何度も身体を好き放題にされ、ローニャはただ声を荒げるしかなかった。抵抗しようにも、所詮は女の力で、複数の男から逃げられるはずもない。



「かわいいよ、ローニャ」



 いつものように、甘い言葉を囁いてくれるナルハンド。しかし、ローニャにとって幸せを感じるはずのその言葉は、もはや恐怖を感じるものでしかなかった。


 四人の相手を、一人でするのだ。時間が早く過ぎることだけを望んでいたが、そもそもいつになったら終わるのかわからない。朝になっても終わる保証なんて、どこにもないのだ。


 ナルハンドはいつもローニャの身体に触れているからだろう、他の三人に比べて触ってこようとはしなかった。代わりに、三人は容赦なく、ローニャの身体を触ってくる。


 女性らしく、発達したその身体を。



「っ……っ!」



 果たして、どれほどの時間が経っただろうか。いつしかローニャは、もう抵抗する姿勢すらなくなり、されるがままになっていた。それは、ただの人形とも言える姿だった。


 そして、カーテンから差し込む光が、朝が来たことを教えてくれる。いつの間にか気を失っていたのだろう、目覚めたローニャは、痛む身体を引きずるようにして、起き上がった。


 身体は、汚されていた。外も、中も……お腹の奥の熱さを、感じる。手でお腹に触れると、なにかが中にあるような感覚があった。



「……ぅ!」



 昨夜から今朝方にかけて、記憶がよみがえってくる。たまらず込み上げてくる吐き気、口を押さえ、ローニャはトイレに向かった。本来、主であるナルハンドの部屋のトイレを使うなど、言語道断だ。


 だが、今はそのようなことを気にしている暇さえない。



「ぅ、え、えぇ……!」



 胃に溜まったものを、吐き出す。気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……!


 涙が溢れてくるのは、嘔吐による苦しさからか、それとも別のなにかによるものだろうか。



「はぁ、はぁ……っ」



 ようやく、吐くものがなくなり、嘔吐感が落ち着く。そのおかげだろうか、少しだけ、頭の中がクリアになった気がした。


 そこで、ようやく部屋に、自分以外の人間がいないことを理解する。部屋の主であるナルハンドはもちろん、あの三人の男も。朝になれば部屋を掃除するはずの、他のメイドも。


 そうだ、今は何時だ……仕事に、行かないと。でも、こんな格好で行けない。まずはシャワーを浴びて、身体を綺麗にして、着替えて……


 いや、なんだか動きたくない。もうこのまま、眠ってしまいたい……もうなにも、したくない……



「う、うぅ……!」



 再びこみ上げてきた嘔吐感。もう、胃の中にはなにも残っていない……だけど、嘔吐感を抑える術も知らず、ただただ吐いた。吐くものがなくなっても、吐いた。


 流れる涙も、鼻水も、身体から流れ出るものはすべて……この気持ちさえも、すべて流れてしまわないかと、密かに願って……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ