夜のお仕事
「ではローニャ、これからあなたにも、夜のお仕事に加わってもらいます。今日は私がお手本を見せるので、学ぶように」
「は、はい……」
部屋に入ったローニャを待ち構えていたのは、主人であるナルハンドとメイド長タロット……2人は、ローニャをあたたかく迎え入れ、ローニャにあらゆることを教えた。
ナルハンドに奉仕することが、この屋敷で働く我々の喜び。彼を気持ちよくさせることで、気に入ってもらえればお給料だって貰える。奴隷として買われた彼女たちだが、一定の働きをすればお金を貰えるのだ。
そのために、するべきこと。ローニャには、その才能があると見込まれ、買われたこと……そして、ローニャにとって初めて見ることになる、男女の営み。
それを目に焼き付け、ローニャの頭はすでにパンク寸前だった。だが、見るだけでは終わらない。
「さ、ローニャ」
タロットからの手ほどきを受け、ローニャもそれを実践した。男の裸自体、見るのは初めてだというのに……それが、いきなり、こんなことをするとは思わなかった。
ただ、ローニャの頭に蘇るのは……もし、失敗したら叩かれるのではないかという、過去の記憶。掃除など、少し失敗しただけでも叩かれた。もしかしたら、今回も……
「ん……ローニャ、無理はしないでいいからね」
しかし、ナルハンドは拙いローニャに、そう言って頭を撫でてくれた。なんとも優しい言葉、あたたかい手……ローニャは、なんとか主のために、応えたいと思った。
手を、口を、胸を……使えるところは全部使うのよ、と、タロットのアドバイスを受け、ついにはローニャとナルハンドは繋がった。初めての感覚に、初めての証が流れていく。
不安や恐怖でいっぱいだったが、しかしナルハンドやタロットの優しい視線に、ローニャの中にはいつしか安堵が生まれていた。そして、次第にこう思った。
私の全ては、この人のものだ……と。実際、奴隷として売られ、そこで絶望の日々を送っていた……そこから救い出してくれたナルハンドに、感謝してもしきれない。
自分の、こんな身体で喜んでもらえるならば……喜んで、全てを捧げたいと、そう思った。
「はぁ、はぁ……」
身体の中に、確かな熱を感じていたローニャは、その後シャワーを浴びていた。初めての仕事だということもあり、今日は終わりだと告げられた。
シャワーを浴び、さっぱりする。それでも、まだ違和感を感じるからか、腹部を撫でていた。
「私……」
先ほどの行為を思い出し、顔が熱くなるのを感じる。驚いたし、どんな気持ちになるのかわからなかった。だが、不思議と嫌悪感はなかった……部屋に入る前には、考えられなかった気持ちだ。
他のみんなも、こんな気持ちなのだろうか。だとしたら、あんなに笑顔で働いていた理由も、わかる。
その日を境に、ローニャの日常が劇的になにかが変わったわけではない。だが、それまでは事務的に行っていた仕事も、主のためを思ってやるようになっていった。
そして、ローニャはしばらくの間タロットと一緒に仕事をしていたが、そのうちにローニャ一人が呼ばれることが多くなった。初めのうちはやはり恥ずかしかったが、それも時間が解決してくれた。
……そんな日々を続け、一年が過ぎた。
「〜♪」
今日も今日とて、夜の仕事の日だ。ナルハンドに抱かれると、幸せを感じることができる……だからローニャは、この時間が好きだった。
呼ばれた部屋にたどり着き、ゆっくりと扉を開ける。そこには、いつものようにナルハンドが待っているはずで……
「……え?」
ローニャの目に飛び込んできたのは、ローニャの予想だにしていたいものだった。
「やぁ、ローニャ」
いつものように、笑顔を浮かべて声をかけてくるナルハンド。しかし、彼とは別に、三人の男がこの部屋にいた。いつだったか、来客として訪れた顔だ、覚えがある。
三人とも、なにやらニヤニヤとした笑みを浮かべている。その笑顔に、背筋が震えるのを、ローニャは感じていた。




