キャッチボール
子供の頃、公園で父親とキャッチボールをした。
硬球のボールは硬くて、痛くて怖かった。
「なんだなんだ、こわがってちゃだめだだめだ!そら」
「うん」
「いいぞ!ナイスボール!」
ぱしゅ。
グローブに収まる音が鳴る。
お互いがボールを取りやすいところに投げるキャッチボールは、心を通わせる思いやりの遊びでもある。相手を気遣いながら胸元にボールを投げる心のキャッチボールだと父から教わった。
ぱぁん。
良い音が響く。
怖かった父親のこともキャッチボールを通して好きになった。
僕は、仕事の転勤が決まった。
実家で父親と久しぶりにキャッチボールがしたくなって。公園へ出かけた。
使い古された色褪せたグローブとともに、父親も随分と歳をとったものだと胸に来る。
この間、彼女を連れて帰省した。
父さん。またキャッチボールしようよ。
今度は孫ともキャッチボールしてよね。