プロローグ
「キレイな花畑だね、クロウ、ありがとう」
満面の笑みで僕に語りかける、幼馴染みのニーナだ。
今日はニーナの8歳の誕生日、僕はこの花畑を見せたくて、2人で森の奥地まで来たのだ。
「誕生日、おめでとう」
僕は花の冠をニーナの頭に被せて、笑いあった
花畑を駆け回り、幸せな時間が流れた。
夕暮れも近くなり、帰ろうと思った時
「声が聞こえる」
何だこの声は、寒気がするような心地の悪い感じ、今までに体験した事のない出来事だった。
どうやら、ニーナには聞こえてないようだ
「ニーナ先に帰ってて」
僕は本能のままに走り出した、声の正体を探りたかったからだ。
森を抜けた先には、荒れ果てた大地、荒廃した街が、存在した。
「ここは、厄災跡地」
半世紀前による幻獣厄災、それにより大陸の多くを失い、地図の大半を書き換えた。
どうやら、厄災跡地まで来てしまったようだ。
声が聞こえなくなった、何だったんだ、帰ろうと思った瞬間、とてつもなく大きな衝撃音と、振動が僕を襲った。
そこには、とてつもなく大きな獣がいた、2本の剥き出しの牙、銀色に輝く毛並み、押し潰すほどの威圧感、その獣は青白い光を放っていた
喰われる!!僕は動けなかった、脚が震え、逃げることも出来ない、もう駄目だと思ったと同時に、それとは別に寒気と甲高い声が聞こえた。
突風が吹いた、渦を巻き、荒廃した街を呑み込み、段々と大きくなり、突風の渦は僕をも呑み込んだ
「痛い、痛い、痛い、痛い、痛い」
体中を切られる痛み、息もできない、もう体の感覚がない、意識が遠退いてく、真っ赤な血が体を覆った。
もう、意識がーーー
「クロウが目を覚ましたよ」
微かにニーナの声が聞こえる、目を開けると、僕はベッドの上で寝ていた。
そこには、お母さんとニーナが涙を浮かべながら、僕を見つめていた。
しばらく頭が真っ白になった。
そうだ、僕は獣に襲われ、突風に巻き込まれたんだ、体中を切られ!?
傷が治ってる、体の痛みもない、夢だったのか?
いや、違う、体中に傷痕が残ってる、ただ、助かったのだ