*5* 矢印付の登場人物図欲しい
ヨハン様を先頭にゾロゾロと娯楽室に行くことになった。
娯楽室には王家専用の部屋があり、そこに通され、王家専用のメイドにお茶のサービスを受けていた。
「このお茶は僕が好きなお茶なんだけど、君も気に入ってくれると嬉しいな」
ヨハン様は王子スマイルで微笑んで話しかけてきた。
王子ってのはティナ(好きな子)だけでなく、均等に優しさを振りまかなくちゃいけないから、大変なのね。
「柑橘系の味がとても美味しいです」
「わたくしもこのお味、好きですわ」
「うちはフラワー系が多いけど、柑橘系もいいわね、アリッサお姉様」
「フラワー系だと、どんなフレイバーだい?」
「ラベンダーやジャスミンが多いかしらね?」
「そうね、アリッサお姉様」
「じゃあ、次はフラワー系もいいんじゃない?」
「フラワー系を飲んでみよう」
「ラベンダーはうちでよく飲むよ」
「では、次はフラワー系を用意させて、また一緒に飲もう」
ティナの好みをみんなでリサーチ中ね。そして、さりげなく次の約束を取り付けてる。やるね、四人組。
ところで、アビゲイル様は誰か狙っているのかな?ティナのお相手と被らないといいけど。
「三か月後の新入生歓迎パーティには、特定の人と行くの?」
いつもは最後に声を掛けてくる公爵家子息のキース様が、珍しく話題を振ってきた。
わたしはティナ次第だと思っていたので、ティナの方を見てどうかと伺った。
「わたしは、アリッサお姉様と行こうと思っています」
「そうね、婚約者もいないし、特別親しい方もいないしね」
「わたくしもご一緒してよろしいかしら?」
「ええ、ぜひ。三人で参加しましょう」
『『『『婚約者なし!』』』』
「そういえば、ヨンはアビゲイルと婚約するって噂があるけど?」
「ああ、あるね。実際どうなの?」
「家柄は釣り合ってるね」
さすが宰相子息のジョセフ様!情報通。牽制してますよ。ヨハン様、どう切り返す?
「ただの噂だよ。我が王家も自由恋愛だから」
「ええ、我が家にもそんな話は来てませんわ」
「そんな噂、あったんですね」
『噂を広めないでくれよ』
『なんだ、ただの噂か』
『ライバル減らないのか』
『噂か、残念だな』
『噂を信じてほしくないわ』
『自由恋愛なんだー』
うーん、ヨハン様×アビゲイル様はないのね。矢印付の登場人物図欲しいなぁ。
王家も自由恋愛って、この国は平和なんだな、やっぱり。じゃあ、ヨハン様×ティナかな。なんだか他人の恋バナは楽しいね。ニマニマしてしまう。ティナも楽しそうにお話出来てよかった。
ティナに婚約者いないって分かったからか、なんだか四人組も嬉しそうに笑ってる。
『『『『ああ、やっぱり可愛い』』』』
みんな、メロメロだわ…
この四人組の中で誰がティナの心を手に入れることが出来るのかな?
部屋に帰る時にティナの気持ちを確かめてみよう。新入生歓迎パーティでは、その人となるべく一緒にしてあげたいものね。
暫くみんなで話したのち、それぞれの部屋に帰って行った。
ティナと二人きりになると、探りを入れるために聞いてみた。
「ティナは気になる方とかいるの?」
「うーん、特にいないわ。それより、アリッサお姉様はどうなの?」
「わたしもまったくいないわ」
「みんな、アリッサお姉様の事、気にしてたね」
「違うでしょ。ティナの事よ、みんなが気にしているのは」
「え?なんのこと?」
ヒロイン、ありがちな自己肯定感が低いっていう設定ですか?好かれていることに気付かないタイプか!みんな猛烈アタックしなくちゃダメみたいですよー。
ここに鈍感ヒロインいますよー!