*2* 美形六人の学園ラブストーリーか
貴族の子息・息女が通う学園の入学式。
やっぱり、主人公は初日に何かのイベントを起こすはず!
ティナと仲良しになったわたしは、ずっとティナにくっついて、これから起こるであろうことを今か今かと待ち望んでいた。
わたしは転生者だが、長い間チートスキルはないと思っていた。義理の妹に出会うまで。
初めて文字が見えた時は驚いたが、すべての人のモノローグが見えるわけではない。
まだ、ティナ以外の心の文字は見えていない。学園ではたくさんの人たちと出会うから、どうなるか楽しみでもあるが、文字が浮かびすぎるのも面倒くさいとも思うけどね。
入学式の為に講堂に入ろうとすると、入口の前に人だかりが出来ていた。
目を向けると、見えました!
『うーん…困ったな』
『初日からこれか』
『王子を守らなければ』
『早く入りたいな』
文字がいくつか読めるので、誰が誰だか分からないが…あの人だかりの中に四人いるらしい。
ティナをチラリと見ると、同じように人だかりを見つめていた。
真っ赤な髪と赤い瞳の美少年が人をかき分け、人だかりの中から抜け出してきた。その後には、銀髪に銀の瞳、金髪に金の瞳、黒髪に黒い瞳と見事な美少年たちが続いた。
その美少年たちがティナに気付いたようだ。わたしたちの方を見ている。
『『『『あの子、可愛い!!』』』』
あららー。四人とも、ティナに一目惚れですか。ふふん、うちの妹、可愛いからね。主人公ですからね。
では、ティナの気持ちを確認しようと再び横を見ると、なぜか二人分見えた。
『あら、第二王子様たちだわ』
『すごい人ゴミね』
ティナの向こう側には、亜麻色の髪にスカイブルーの瞳をした、これまた美少女がいた。
新キャラ登場?ライバル?悪役令嬢?親友?
周りを見渡すと、今わたしの目の前にいる六人以外に見える文字はなさそう。
わたしが見える文字の人たちは美少年と美少女ばかり…
と、いうことは… 見える人たちは「物語の重要人物」とか「攻略対象」ってことだよね。きっと。
で、わたしは登場人物じゃなくて、ただの読者の立場。リアル・リーダーになるわけね。ふむふむ。
登場人物が美形六人の学園ラブストーリーか。
どんな展観になるのか気になるけど、ずっと人の考えを読むのは疲れそうだなぁ。あ、疲れた時なんかは目をそらしていればいいか。
講堂に入ると誰もがみな、六人の登場人物を目で追いかけている。そうだよね、この六人が断トツの美形だもん。ヒロインの横にモブキャラいて、ごめんなさーい。
さて、これからわたしは、キューピットになるべき?
勝手にモブまたは読者が協力していいものなのかな?
誰がヒロイン?ヒーロー?
…うーむ。もう、ただの読者として見ているだけがいいのかな…?
考えが読める人が増えると、てきめんにめんどくさくなってきた。




