*13* どうなっているの
たった一晩でゲッソリした感じがする。目元は泣いてからすぐ冷やしたので、腫れていないはずだ。おかげで、誰も突っ込みを入れてこないので、あまり変化がなかったようだ。そんな事に少しだけ安心した。ちゃんと誤魔化せそうだ。
授業に身が入らないまま適当に済ませていたら、放課後になってしまった。
「アリッサお姉様、一緒に来てもらえる?」
教室で紹介を受けると思っていたのに、別の所に連れていかれるようだ。キース様は後で合流するの?
無言のまま、わたしはティナの後をついて行った。
着いた先は厩舎だった。
これから乗馬クラスだから、ここで待ち合わせにしたのだろうか?
「この子にいつも乗せてもらっているの。クレアよ」
「そうなの、キレイな毛並みね」
「ええ、わたしもお世話をしているけど…彼もお手伝いをしてくれているわ」
ティナがわたしの後ろに向かってほほ笑んだ。
振り返るとそこには…キース様ではなく…見たことがない方が立っていた。え?誰?
「はじめまして、アリシア様。オリバー・アンダーセンです」
「はじめまして。オリバー様。アリシア・エリクセンです。」
「オリバー様は一学年上の先輩なの。乗馬クラスで初心者のわたしの指導をしてくれて…」
二人は微笑み合っていい雰囲気だけど…
ちょっとどうなっているの?キース様は?将来を話し合ったんじゃないの?
ちょっと、あの四人組は何だったの?わたしはどうしてあの六人の考えを読めたの?
ティナが主人公のラブストーリーじゃなかったの?
わたしには何が何だか分からなかった。
オリバー様は昔から王家の騎士を輩出するアンダーセン子爵家の三男だそうだ。
ティナがわたしに紹介しづらいと思っていたのは、三男のオリバー様が我が家の婿養子に入ると、わたしに勘違いされたくなかったらしい。
「クリス、確かに俺は爵位を継げないけど、学園を卒業したら王家の騎士として出世して、必ず爵位を戴けるようにするよ。アリシア様、エリクセン家に婿養子なんて考えていませんから、ご安心ください」
オリバー様はとても誠実な人のようだ。ティナが好きになったのも納得した。
今までだって十分、ティナは可愛かったけど、オリバー様を見つめる顔は本当に綺麗だ。この世の幸せを独り占めしているような笑顔をしている。
しかも!ティナの事をクリスと呼んでいる!!
学園に入学してからティナの呼び名は子供っぽいから旦那様にはクリスって呼んで欲しいなんて言っていたけど、オリバー様には既にクリスと呼ばせているのね!!
「あれ…?でも、昨日、キース様と将来のお話をしたって言ってたけど…なんで?」
「それは、昨日、アリッサお姉様がキース様と将来のパートナーとしてパーティに行くことになったでしょ?だから、キース様の将来の考えとかを聞いていたの」
は?なに?
わたしとキース様ってパートナなの?一緒にパーティに行くの?ん?
「だから、将来アリッサお姉様がキース様と結婚したら、わたしがオリバー様とエリクセン家を継いでもいいし、オリバー様が爵位を貰ってもいいしって話したの」
ちょっと待って!わたしとキース様が結婚?いや、なにそれ?なんのこと?嘘でしょ!?
「キース様、やっと誘えたって、オッケーしてくれたって、すごく喜んでいたわ。みんなアリッサお姉様を狙っていたものね」
ん?みんなわたしを狙っていた?みんなティナを狙っていたんでしょ?
まったく、話が分からない。えーと、どんな状況なんでしょうか?
パートナー?将来?結婚?オッケー?
何のことでしょうか?
えーと、とりあえず、ハッピーエンド?
次回最終回です




