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12/14

*12* 何も考えたくない


「お昼から、上の空だね?どうかした?」

「え?いえ、何でもないんです。そういえば水やりの事なんですけど   」

「せっかくだから、毎日花壇の世話をしたいと思っている。もちろん、アリッサと一緒にいたいよ」

「…そうですね。いつ芽が出るのか気になりますしね。二人で喜び合いたいし」

「うーん、そういう意味ではないんだけど…」

「はい?」


キース様は顎に手をやり、困ったような顔をしていた。もう考えが読めなくなってしまったから、何を思っているのかよく分からない。

―――嫌われたくない。好かれたい。

は?何考えてるの?

妹を好きな人を好きになってどうするの?バカじゃない、わたしったら。たかがモブのくせに!


「―――いい?アリッサ」

「あ、はい!」

「本当にいい?よかった」

「はい…?」


しまった!聞いていなかった。適当に返事をしてしまったけど大丈夫だろうか?

嬉しそうな顔をしているキース様を見て、今の話なんでした?なんて聞ける雰囲気ではなくなってしまった。

とりあえず、調子を合わせておいて、探ってみるか…な?

キース様のお話は、水やりの件?新入生歓迎パーティの件?ティナのパートナーの件?


「えーと、水やりはこれからも二人でって事ですよね?」

「うん、よろしくね」

「んー、ティナは…?」

「ティナはパートナーと行くんだよね。良かった」


え?良かったって?好きなティナがパートナーと行くのに?もしかして、自分がパートナーだから良かったってこと?

頭の中がゴチャゴチャして、うまく整理出来ない。考えられない。

いつもは楽しい園芸クラスなのに…

早く終わらせて、とっとと部屋に帰りたかった。部屋に帰って、一人になりたかった。


キース様は今日も女子寮の入口まで送ってくれたが、夕食の約束はしてこなかった。やっぱりキース様も、ティナもしくは他のお相手と夕食を取るのかもしれない。

そんな二人を見たくはなかった。

夕食を食べる気にもならなかったので、食べずに部屋で過ごした。宿題を終わらせてベッドの上に寝っ転がった。

もう、何も考えたくなかった。



何か叩く音がして目が覚めた。時計を見たらまだ9時だった。


「アリッサお姉様?」

「ティナ?ちょっと待ってて」


知らない間にうたた寝をしていたようだ。服や髪の毛が乱れていないか確認してからドアを開けてティナを向かい入れた。


「アリッサお姉様、寝てました?」

「うたた寝していたみたい。どうしたの?」

「ちょっと話があって、いい?」

「もちろんよ、何?」

「今日はあまり調子がよさそうでなかったから、どうしたのかと思って。もしかして、わたしがパートナーを紹介しないから気にしてるのかと思って」

「違うわ。自分自身の事でちょっと…考えていの。ティナは関係ないのよ」

「わたしもパートナーの事でいろいろ悩んでいたから、紹介も出来なくて。でも、さっきまでキース様に将来の事も含め相談したの。それで、安心したというか、お任せできるというか   」


やっぱり、パートナーはキース様だったの!?

二人で話し合うなんて。将来の事を話し合うまでの仲だったの!?


「―――恥ずかしいけれど、明日の放課後に正式に彼を紹介させて。アリッサお姉様の印象も聞きたいわ」

「…わたしも知ってる方でしょう?」

「ふふふ、お楽しみに。明日ね。おやすみなさい」

「……おやすみなさい」


ティナの相手はキース様なんだ。

キース様が話していたのは、ティナとの事だったんだ。

そう思ったら涙が止まらなくなっていた。ああ、やっぱりわたしはキース様を好きになっていたんだ。

明日の放課後なんて来なければいいのに!二人が並んで笑っているのを、わたしも笑顔で祝福できるか分からない。

そしてそのまま、あまりよく眠れずに、朝が来た。


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