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*11* ラブストーリーは終わってしまった


男子寮を出たわたしは、寮には帰らず、図書館裏へ行った。

まだ芽は出ていないので、花壇に水をたっぷりやった。あっという間に終わってしまった。

そういえば、種を植えてから一人で水やりをするのは初めてだ。別に二人揃って水やりなんてしなくてもいいんだなぁ。一人でやっていたら、水を掛けることもなかったのに…

少し出てきた雑草を毟ってから、寮へ戻った。


今日もティナと一緒に夕食を食べることが出来なかったので、一人でさっさと食事を終わらせて部屋で勉強をしていた。

食堂はいつもより混んでいたし、騒がしい様子だった。その訳が、一か月後に控えた新入生歓迎パーティのパートナー探しの為だったとは、わたしは気付いていなかった。

気が付いていたとしても、わたしはティナやアビゲイル様と一緒に行くつもりでいたし、パートナー探しは必要ないと思っていた。翌朝の授業前までは……



「え?どういうこと?」

「ごめんなさい、アリッサお姉様。わたし、新入生歓迎パーティにパートナーの方と行く事になったの」

「アリッサ様、実は、わたくしも…ドルトンと一緒に行く事に…」


えええ?どういう事ですかー!?

さりげなく、アビゲイル様、ドルトンって呼び捨てしてますよ!やっぱり、付き合ってたのねー!

照れてる二人、可愛いですよ。おめでたい事ですけどね。

えー、でも、わたし独り参加か。


「アリッサお姉様、わたしのパートナーと三人で行きましょうか?それとも、誰かと行かれます?」

「ううん。二人とも遠慮しないで、パートナーの方と行ってね」

「じゃあ、会場で会いしましょうね、アリッサ様」

「はい、アビゲイル様。ドルトン様とお付き合いする事になったんですね。おめでとうございます」

「ええ。ありがとうございます。なんだか恥ずかしいです。ティナ様のパートナーの方とお付き合いしてるの?」

「まだ正式には…パーティでアリッサお姉様に紹介してからお返事をしようと思っているの」

「どなたなの?」

「まだ内緒。お楽しみに」


周りを見渡すと、どうも男女ペアで席に座っている人が多いようだ。

最近、ティナにもアビゲイル様にも授業中以外でなかなか会えなかったのは、そういう事だったのか…

今更パートナーを見繕う気もなく、モブのわたしは壁の花で十分だろう。

不意にトントンと肩をたたかれた。


「おはよう。昨日は見舞いに来てくれてありがとう」

「おはようございます。キース様、ご加減はどうですか?」

「もう、なんともないよ。安心して」

「ああ、よかったです」

「今日は園芸クラスに一緒に行こう」

「その事なんですけど、毎日二人揃わなくてもいいのでは?一日交替でどうですか?」

「うーん、でも… あ、先生がいらしたから、後で話そう」


キース様はわたしの隣に座ったまま、授業を受けることにしたようだ。

昨日の授業でやったことを少しサポートしたが、キース様は一日くらい授業に出なくても何の問題がないみたいだった。それにも安心した。


いつものように、お昼ご飯はみんなでカフェテリアに行くのかと思っていたが、アビゲイル様とドルトン様だけでなくティナも別の所に行ってしまった。

わたしはヨハン様、キース様、ジョセフ様と四人で食べることになった。

とっても居たたまれないです。ティナもいないのに、なんだかわたしが三人様を侍らしているようで… でも、ティナの相手はこの方たちではないのかな?

久しぶりに、ちょっと探ってみよう。


ん?おかしい… 考えが読めない。え?なんで?

そういえば、いったいいつから読めなくなっていた?最後に考えを読んだのっていつだっけ?


もしかして、主人公のティナにお付き合いする人が出来たから、ラブストーリーは終わってしまったという事なのだろうか?

結局、わたしは大事なイベントはほとんど見逃してしまった気がする。読者としてどうなの?

ティナの意中の人が誰かも分からないまま、キューピットにもなれず、役にも立たなかったみたいだし。モブは所詮モブでしかなかったー!

これで終了…?


軽くショックを受けたままお昼を終えて、午後の授業も上の空で終わっていた。

気づけば、キース様と一緒に図書館裏まで来ていた。


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