表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書けなくなった作家擬きが出会ったのは甘党少女でした。  作者: 神無桂花
甘党少女と追い縋る影。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/72

アイの深めかた。

 「今日も来たんだ」

「はい」


 桐原さんは、今日もマンションを見上げていた。


「君が凪にこだわる理由、いまいちわからない」

「私の評価のためです。不登校の人が学校に来るようになったら、内申点に大きなプラスなので」

「ふぅん」


 そりゃまた。


「無理矢理は意味ないぞ。例えば、お前のクラスは凪を迎える準備ができているか、茶化すやつはいないか 無神経なこと言うやつはいないか? お前と影山が歓迎しても意味ないだろ。ずっと付きっきりで面倒を見る気か?」

「意地悪な質問ですね」

「当然の疑問だろ」

「大切にされているのですね」

「誰よりも大切な人だから」


 桐原さんは上品にクスクスと笑う。


「そうですか。なら、なおさら、学校は来るべきかと。将来のために」

「あぁ、そうだな」


 その将来が、あるなら。

 凪に生きるの事が、許されるなら。


「そうだな」


 でも、俺は、どこか凪の思いを優先したいとも思っていた。

 凪に生きて欲しいと思いながら、凪の望まない方法で生き延びさせるのも、どうなんだと迷っていた。


「荒谷さん、でしたか?」

「名前教えたっけ?」

「影山さんからです」

「あー」


 影山は俺との関係をどう説明したんだ。


「神代さん、会えますか? 今日は」

「無理だと思う」

「残念です」


 心なしか、心から残念がっているように見えた。


「一年生の頃は、違うクラスだったのですよね。体育では一緒でしたけど」


 急にどうした、堅物な雰囲気が緩くなっていく。それはどこか、恋する乙女を思わせる目で。


「私、実は神代さんのことが、好きでして。一目惚れで。この間話したのが、初めてで。緊張して、動揺させたのが、結構、ショックでして」

「一目惚れって、ライクじゃなくて、ラブってか?」

「はい」


 マジかよ。


「第一印象最悪のスタートですが。諦めたくないです……!」

「あの、本当の目的、俺に教えてよかったの?」

「交換条件です。私の目的を正直に話したので、会わせてください」

「そんな強引な取引があるか」

「……そうですね、すいません」


 堅物な雰囲気が戻って来た。けど、しょんぼりとした雰囲気は隠せていなかった。


「そのわりには、結構きつい事言ってたけど」

「そ、それは、その。はい。言い訳はしません、ただ、その、思ったより、きつい言い方に、なってしまって。はい」


 申し訳なさそうに顔を伏せる。

 ……はぁ。


「もしもし?」

「諭さん? どうかされましたか? 忘れものですか?」

「いや、今マンションの前に桐原さん来てるけど、どうする?」


 しばらくの無言。

 桐原さんの視線が痛い。


「諭さんは、どうして欲しいのですか?」

「……会った方が、良いと思う」

「今の間が物凄く不安を煽りますね」

「まぁまぁ」


 少しだけ、棘を感じた。


「今、降りるので、待っていてください」


 通話が切れる。


「来るってさ」

「や、やった……!」


 エントランスに黒いワンピースを見にまとった少女が降りてきた。見慣れた薄い茶色の髪。警戒心MAXなのがわかる。拒絶の意思を全身から発している。


「お待たせしました、何か御用ですか? 桐原さん」

「あ、あの。この間は、すいません、キツイ言い方をしてしまい。直接、謝罪をと思いまして」

「わかりました許します。なのでもう関わらないで頂けると、助かります」


 取り付く島無しとはこの事か。凄いな。

 凪は俺の手を取ると、エントランスの方に向き直る。


「それでは。行きましょう、諭さん」

「ま、待ってください。くっ!」 


 凪は聞く耳を持たず、力強い足取りでマンションの中に俺を連れて行く。桐原さんが手を伸ばすも、俺の服を掠るだけ。自動ドアは閉まる。ちらりと振り返ると、桐原さんの捨てられた子猫のような顔が目に入った。


「ん?」


 ポケットに手を突っ込むと、紙が入っていた。

 凪に見つからないよう。一旦部屋まで持ち帰るか。




 桐原さんの連絡先ねぇ。

 渡されたのは電話番号とメールアドレス。一応登録して、メールを送った。


『気づいてくれたのですね。助かりました」

『そうかい』


 それだけ送ってスマホをベッドに放って凪の後ろに。


「諭さん?」

「ん」


 後ろから抱きしめてみる。凪を包んでる感じがして、なんか良かった。凪の何もかもを独り占めしている感じがする。俺は意外と独占欲が強いのかもしれない。

 そう思うと、俺も桐原さんを追い払う側になってしまうのだが。

 俺は一瞬考えたのだ。凪を学校に行かせる選択肢を。

 凪は好きだが、凪にはちゃんと生きて欲しい。

 病気を治す選択肢を取った後、凪を学校に、なんて思ったんだ。今は取らないかもしれない。けれど、これから。って。


「凪……」

「はい。今夕飯作ってるので、気をつけてくださいね」

「良い匂い」

「あはは、家から出ないので、汗もかかないんです」

「汗だくでも別に良いや」

「そ、それは、ちょっと変態チックです」


 頬ずりする。こうして密着していると、凪への愛おしさが増していく。

 そうだ、深めるも何もない。今俺は、凪への愛情がいくらでも湧いてくる。

 抱きしめる腕の力が強まる。

 俺は考える。

 このまま、俺は。

 どうする。



・この気持ちを昂らせて凪を部屋に連れて行く。


・落ち着くために離れる。








レビューいただきました。ありがとうございます。なんかやる気湧きますね。

あっ、最後のは選択肢です。今彼の中にある。

一票が入り下が選ばれました。コイントスで決めるのは避けたいので助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ