第一章 動きだす世界(8)
お昼になり、今回はサナさんと一緒に食事をとりたかったがルーシーが戻ってきたので食事を共にした。
「午前中はサナにいろいろと教わっておったのじゃろ?」
「あぁ。俺がこの世界で楽できてるのはよく分からん何かによってのものであるってことが分かった」
「たわけ、もっとちゃんと勉強せい」
俺がふざけった受け答えをしたので、ルーシーが俺を咎める。すると、そこでサナさんが助け舟を出してくれる。
「失礼ながらルーシー様。海斗様はしっかりと励んでおられました」
サナさんは三人一列に綺麗に並んでいるところから一歩前に出てそう告げる。
「む、なんじゃサナ。妙に彼奴の肩を持つのぅ」
サナさんに対しニヤニヤと顔を向けるルーシー。すると、サナさんも少し頬を紅くする。
「まぁ、お主が何を思っていようと儂は気にはせん」
そういって、お皿の肉を口に放り込んだ。
それを見て、俺は得意げに。
「どうだ、ちゃんと勉強してたろ」
「はぁ、なぜ今の会話からそのような言葉が出てくるのかのぉ」
俺の言葉に対し、そう耐え行き交じりにこぼすのだった。
(ううん、なぜ俺はため息をつかれているのだろうか)
そこで、ふとサナさんを見るととてもすごい満面の笑みをこちらにくれた。
「…」
昼食後は砦内の中庭のようなところに移動し、ルーシーと魔法の特訓だ。ちなみに、メイド三人衆もいる。
「ふむ。とにかくお主は魔法に関しては初心者だからな。基礎の基礎から行くのじゃ」
そう言うと手をパンパンと鳴らす。すると、メイド三人衆の一人猫族のサラさんがこちらへとくる。
そして、サラさんはどこからともなく眼鏡を取り出す。眼鏡をかけると知的感が増してすごくなる。
「それでは、魔法の仕組みについて一から解説させていただきます…」
一時間後…。
「…」
「…であるからしまして、このパルスが…」
(まったくもって理解できん)
「…ということです」
俺がサラさんの話を全く理解できずにいると、いつの間にか説明が終わっていた。
「どうじゃ、海斗よ。とても分かりやすい説明じゃったろ」
そういいながら腕を組み、うんうんと頷くルーシー。
ここで理解できていないのは、どうやら俺だけらしい。
「ま、まぁ」
「それじゃあ、さっそく実践といっているかの」
そういってルーシーは人差し指の先にごうごうと燃え盛る、焚火よりも少し大きめの炎を生み出す。
「これは本当に初歩の初歩の初歩の魔法じゃ。魔法で大切なのはイメージ。まずは体の中にある魔力が体をめぐり、指先の一転に集中することをイメージしてみるのじゃ」
(えっ、これが初歩の初歩だと)
俺があからさまに驚いていると、サラさんが補足してくれた。
「これは魔力量の関係でこうなっているだけですので、ろうそくの火を海斗さんはイメージしてみてください」
俺は納得すると、返事をしながら左手の人差し指を顔の前に持ってきて突き立てる。そして、目を閉じ、まず血流をイメージするように魔力の流れをイメージする。
そして、その流れが左手の人指し指に流れてろうそくの火を形作るイメージをする…。
すると、サラさんから声がかかる。
「そのまま流れを絶やさないようにして、目を開けてみてください」
俺はその声に従ってゆっくりと瞼を上げる。
「おぉぉ」
目の前にはロウソク並みの火が指先から上がっていた。
「あれ、でも熱くない」
「はい、魔法の行使者がその魔法の行使中はその魔法の効果を受けません」
俺は魔法の行使を止めながら問いかける。
「じゃあ、この火でどこかを燃やしたらその効果は俺にも反映されるってことか」
「そういうことになります」
そこでルーシーが口を開く。
「それにしても変な話じゃのぉ」
「どうした?」
「あれだけの魔力を錬っておいて、どうしてそれしきの炎しか出んのじゃ」
「それは、単にイメージの問題では」
ルーシーの疑問にサラさんが答える。
「そうか。ならば、海斗。早速焚火なもの物を錬ってみるのじゃ」
「いや、そう簡単に言われても…」
俺がいきなりの申し出に戸惑いつつも、先ほどと同じ要領でやってみる。
(焚火のような感じのをイメージして…)
再び、魔力の流れを意識しイメージをめぐらせる。
「…」
しかし、今回は何も起こることはなかった。
「おかしいですね。理論上は海斗様でしたら可能なはずですが」
「まぁ、彼奴自体異常な塊じゃからのぅ。まだまだ分からん事があっても不思議ではなかろう」
「おい」
その後もしばらく初歩の魔術を行使しては、魔力量を上げてみるということをしてみたが、どれもうまくいかなかった。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。