表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/151

第三編 勇者編 第三章 決着「いろんな意味で」(4)

更新遅れてしまって申し訳ありません。


皆さんは夏コミはいかがだったでしょうか。自分はもう疲労困憊です。

皆さんも体調管理にはお気をつけて。



 男に言われ、俺たちは急いでルーシーの部屋に向かう。

 部屋の前に行き、ノックをすると返事が返ってきたので中に入ると、そこには一人の女性が、いや少女がいた。


「お前は…」


「久しぶりね」


 アリスはこちらをみると一瞬ぱぁっと顔をほころばせるが、はっとなるとすぐに顔つきを戻しいつものツンとした態度に戻る。


「どうしてアリスがここに?」


 俺が尋ねると、答えたのはアリスではなくこの部屋の主だった。


「彼女が王国の使いであるからじゃ」


 そういって「はよすわらんか」とせかされたので、テーブルを挟んでアリスと対面するように座る。

 もちろんルーシーは机の端、いわゆるお誕生日席に腰を下ろしている。そして、全員が自分に注目しているのを確認するとルーシーはアリスに事の次第を話すよう促す。


「…実は先日聖騎士が我が王国に現れました」


 その瞬間、場に緊張が満ちる。

 もしかしなくても、アリスが言う聖騎士とはこの前のくそ野郎たちの事だろう。俺達の予想通りになったわけだが、何かしらの動きがあったからアリスがこちらに来たのだろう。


 俺は心して続きの言葉を待った。


「結論から言うと、奴らは今、城の牢屋に幽閉しています」


「ほう、それはすごいの。して、どうやって捕縛したのじゃ」


 ルーシーがそれに感心しアリスに尋ねるが、アリスは首を横にふる。


「実は戦ってはいないのです」


「ならどうやって…」


 俺が尋ねるとなぜかキッと睨んでくるが、すぐに他の人に目線を移して説明を続ける。


「幸いなことに彼らは我が王国が魔王側についていることを知らなかったようだったのでそれを利用しま

した。簡単に言うと、食事に薬を盛りました」


「おぉ、それなら納得ですね」


 スフィアをはじめみんながそれについて関心を示す。ただ、俺としてはちょっと恐怖を感じてしまったけど。なんか中世を思わせて、異世界すごいな、今更だけど。

 俺がそんなことを思っていると「でも…」とスフィアが疑問を抱いたようにアリスに声をかける。


「それならば問題は解決したはずでは。報告だけならばアリス様がこちらに赴く故がないように感じます

が」


 その発言を聞き「確かに」と思いながら、やっぱり俺に頭を使うことは苦手だなと再認識した。

 多分、こういう席に座るものとしてはすぐに気が付かなきゃいけないことなんだろうけど。


「いえ、実は奴らが妙なことを言っていたので王女様の命でこちらに来たのです」


 俺はもしかして思い口をはさむ。


「それって、勇者が暴走するとかどうとかって話か」


「そうよ。その反応をするってことはもう遅かったのね…」


 そう言って表情に影を作る。しかし、すぐに眉を寄せて思案顔になりルーシーの方を向く。そして、分かりやすく首をひねる。


「まって、ならどうして魔王様がここにいるの。ですか」


 アリスは少々おかしいと思ったらしく、焦ったのか口調が素に戻っていたので、慌てて訂正しながら尋ねている。

 おそらく、勇者が暴走したのになんでルーシーが五体満足かつ、まったくと言っていいほど消耗した様子が見えないのかということだろう。


「ふん、我が勇者なんぞに後れを取るはずがなかろう。と、言いたいところじゃがの、実は勇者は海斗の妹でな、海斗が勇者の目を覚まさせたのじゃ。まぁ、犠牲は少なからず出てしまったがの…」


 そういうと天井を見上げるルーシー。その表情はどこか悲しみの中に、申し訳なさが垣間見えた。


「そうですか…」


 沈んだ空気が部屋を包むが、ルーシーが顔を元に戻し声を上げたことで話し合いが再開される。


「して、そちらとしては奴らをどうするのじゃ」


「我々としてはまだ、対応を決めあぐねていますが…。おそらく今回の剣がありますのでそちらに引き渡す形になると思います」


 それを聞くと、ルーシーは「うむ」と頷き、代わりにスフィアが「そうしていただけると幸いです」と返す。


「それで今、勇者はどちらに」


「部屋もうけ、軟禁しております。いくらご主人様の妹だからとはいえ、ことが事ですので」


 すると、なぜかアリスは驚きの表情をする。

 おそらくいくら俺の妹とは言え、魔王に逆らったのだから今頃引き裂かれているとでも思っていたのだろう。


 まぁ、これまでの人間の常識だとそれぐらいが普通なんだろうな。いくら俺たちと話したことがあるとは言っても、やはりこれまでの歴史がいろいろと認識の誤差を生んでしまっているのだろう。


 とりあえず状況を飲み込むと、アリスはそのことに関するある程度のと段取りや取り決めをスフィアと話をしだす。そして、それが終わるとその他の情報の交換や話し合いが行われていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ではご主人様、お先に失礼いたします」


「の、のぞくでないぞ…」


 スフィアはこちらに軽く頭を下げながら、ルーシーは横目で顔を染めながらそう言って部屋を後にした。

 と思ったらルーシーが扉を開けひょこっと顔を出し、先ほどとは違う真剣な表情をしながら「後で話があるからここに来るのじゃぞ」と言い残していった。

 それに驚いてしまった俺は、扉が閉まる直前に「あぁ」と返事をした。

 話とはなんだろうかと訝しげに思っていると、何やら視線を感じたのでそちらを向くと、アリスがこちらを睨んでいた。


「ど、どうした」


 どんなに嫌われているといはえ、この状況で黙っているわけにはいかないので、おどけた風になりなが

らもなんとか声をかける。


「何でもないわよ」


 そう言ってそっぽを向かれてしまった。


「…なの」


 すると、顔を背けたままなにやら口にしていたので「えっ」と声を上げてしまう。そうすると、アリスはこちらに向き直ると。


「あんたは大丈夫なのって聞いてるの」


 そう心配の言葉を投げかけてきた。


「あぁ、問題ない」


 そういうと「そう」とだけ言ってまた窓の外に視線を戻してしまう。

 どういう心境の変化だろうか…。しかし、どうしたものか。

 俺が手持ち無沙汰にドアの付近でたたずんでいると「いつまでそうしているつもりよ」とアリスが言ってきたので椅子に座ろうかと思ったが一瞬止まってしまう。


 普通なら早く座れということだが、好感を持っていない相手に対しては、早く出ていけとも取れないだろうか。


 数秒、行動が止まったが俺は全社であることを信じて椅子に腰を下ろした。

 恐る恐るアリスの顔色をうかがうが何も変化は見られない。どうやら正解だったらしい。


 とりあえず安堵した俺は、部屋の隅で待機しているメイドさんに頼みお茶を入れなおしてもらう。

 そのお茶を口に含むと、スッと落ち着く感じがする。

 そんな風にしていると、「ねぇ」とアリスが声をかけてくる。


「なんだ」


 すると、相変わらず顔はそっぽを向いたまま口を開く。


「あんまり抱え込むんじゃないわよ、気分転換したいんだったらいつでもうちの国に来てもいいんだからね…」


「…」


 その物言いに俺は固まってしまう。その様子を不思議に思ったのか、今までそっぽを向いていた顔をこちらに向け心配そうに見てくる。


「な、なんか言いなさいよ」


「いや、本当にアリスか、お前」


「は、はぁー?」


「いや、お前が俺にそんなこと言ってくるなんて覆ってなかったから、驚いちゃって」


 俺がそういうと、かぁっと顔を紅く染め慌てふためき始める。


「なっ。ちがっ。そう、あんたがそんなだとお姉ちゃんが悲しむからよ。いくらあんたでも、お姉ちゃん

の認めた人なわけなんだし。カン違いしてるんじゃないわよっ」


 そう言って腕を組むと、またそっぽを向いてしまった。


「そ、そうか。でも、その、ありがとな」


 何とかそう言って感謝を伝えると「だから、あたしは…」となにやら小さな声で言っていた。

 まぁ、もともと好感度はゼロに近いからこれ以上下がることはなし、うん。そういうことにしておこう。

 そんなことを思っていると、アリスが机のコップをつかむと残っていた紅茶を一気に飲み干すと立ち上がった。


 「どうかしたのか」と聞くと「帰る」といってドアのほうに歩いて行ってしまう。

 俺も慌ててその後を追いかける。アリスの御つきのメイドは、気をきかせて俺の後ろについてきてくれた。


 アリスはそんな俺を気にした様子もなくドアを開け廊下に出た。


「…」


 すると、なぜか廊下に出たところで立ち止まるアリス。


「どうした」


「…」


 俺が尋ねても黙りこくってしまっている。そこで、少し考えて、俺はある可能性に思い至る。


「もしかして、お前。転移の間がどこか、分からないのか」


 俺がそう聞くと、ビクッと身体を震わせるアリス。どうやら図星らしい。


「はぁ。ほら行くぞ」


「っ…」


 そう言ってアリスの手を取って転移の間の方に足を踏み出す。


「な、何してんのよ」


「なんだよ。お前が方向音痴だから、案内してるんだろ」


 俺は後ろを向かずに、歩きながらアリスに答える。


「そ、そうじゃなくて…」


 最後に何か言っていたようだったが、あんまりよく聞こえなかった。しかし、言い直してくることもなかったので、そのまま転移の間へ向かうことにした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ほら着いたぞ」


 転移の間へと行きつき、後ろを向くと、なぜか顔を紅くにしながら床を見つめていた。


「おい、アリス? どうかしたのか」


「へっ、な、なんでもないわよ。じゃあ、魔王様によろしく伝えといてよね」


 そういうと、つかつかと部屋の中へと入っていく。そして、さっさと魔方陣の真ん中へと行き、担当の者に指示を出す。

 すると、すぐに魔方陣が赤く輝きだし魔法が作動し始めた。


「ありがと…」


 そして、光に包まれる瞬間何か言っていたのだが小さすぎて聞き取ることはできなかった。



                                 



最後までお読みいただきありがとうございました。


前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ