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第三編 勇者編 第三章 決着「いろんな意味で」(1)

あとがきに「報告」あり


 だんだんと意識が覚醒していく。

 ぼやけた視界に光が差し込み、影があることですぐそばに誰かがいることは理解できた。


 そして、俺が目覚めかけていることに気が付くとこちらに顔を近づけてくる。


「…さま。海斗様っ」


 かけられる声が鮮明になるにつれ視界もクリアになっていく。

 シュンとうなだれたウサギ耳。


 サナだった。


 心配そうにベッドに手をつきこちらをのぞき込むサナ。

 俺は無意識のうちにサナを抱き寄せていた。


「っ…! 海斗様、なにを」


 いきなりのことに驚き、サナは耳をぴんと立てていたが、俺は自分がしたことにサナよりも驚いていた。 

 しかし、とても落ち着いた気分になれた。


 そして、俺はある一つのことに気が付く。いや、俺はもともと気が付いてはいたのだ。ただ、認識した

ということだろうが…。


 前にもこのように命を落としかけたことはあったが、それがこう立て続けに起こると不安になるものだ。


 次も同じことが起きた時、果たして本当にまたこうして生きていることができるのだろうかと。

 そう思うと、俺は抱きしめる腕にさらに力が入る。まるで、ここに居ると確かめるように…。


 サナは少しの間、何が起きたのかという感じでいたのだが、しばらくすると俺にこたえるように腕を首の後ろに回し抱きしめ返してくれた。

 そうやってしばらくの間、俺たちはお互いの存在を確かめ合ったのだった。





「ごめん、サナさん。いや、サナ」


 とりあえず、体を離した後俺は誤った。体はベッドに横たわったままだが、心の中では土下座をしていた。


「ううん、大丈夫。私も、その、うれしかったから」


 そういって、顔を紅く染める。耳がぴくぴくっと動いたことから本当にうれしく感じてくれたのだろう。


「そういえばっ…」


 俺は体を起こそうとして、わき腹に激痛が走る。


「大丈夫?」 


 そういって、俺の背中に手を回し体を起こさせてくれる。


「ありがとう」


「とりあえずこれ飲んで」


 そういって、差し出された水を一気に飲み干す。


「未久は? あの後どうなったんだ」


「私が起きたのはとても大きな音がした時で、その後は安全な場所に避難していて事の顛末についてはスフィア様から聞いたのだけど、みんな無事出そうよ」


 俺はそれを聞いて胸をなでおろす。


「…」


「…」


 しばしの沈黙。ただ、全然嫌な感じのしない、それよりも何となく落ち着くような感じがする。


「なぁ、サナ…」


「うん?」


「好きだよ」


「えっ…」


 俺の言葉が信じられないとでもいいたげに、あからさまに狼狽するサナ。その耳は再びぴんと立ってい

た。


「俺さ、本当はずっと不安だったんだ。いきなり知らない世界に呼び出されてさ、戦いにも身を投じて。

確かに、ルーシーとかいい奴でセバスさんも気遣ってくれていたのも分かってる。それでもさ、不安にな

るのはしょうがないだろ」


 俺の言葉をサナは黙って聞いてくれている。


「そんな中で、一番そばにいてくれて、いろいろこの世界のことを教えてくれて、二人でいろんなことを

話して、出かけたりもして。でも、思ったんだ。もし、またこんな風になった時、この気持ちを伝えないでサナのもとを去ってしまう時が来るのかなって…。だから、そのなんていうか…」



 ――― ありがとう ―――



「あ、あれ。ここでありがとうは違うか」


 いつの間にか、告白の言葉のはずなのに感謝の言葉になっていた俺は慌ててとりなそうとして、サナを見る。


 すると、サナはうつむいてしまっていた。


「さ、サナ?」


 俺が不安そうにしていると、今度はサナから俺の方に抱き着いてきた。そして、胸に顔を埋め涙声で俺の不安を否定する。


「ううん、うれしい。私こそ、ありがとうだよ」


 そういって、泣きじゃくる彼女の頭をやさしくなでてやる。


 しばらくすると、サナが顔を上げる。


 泣いたせいで少し紅くした目でこちらを見上げる。だが、位置的にこの状態だととても顔が近くなる。


 俺たちは見つめ合う。


「海斗…」


 艶のある唇が動き俺の名を呼ぶ。


「サナ…」


 俺も呼応するように彼女の名を呼ぶ。


 名前を呼ばれ、サナは瞼を閉じその時を待つ。


 その彼女に、俺も瞼を閉じてゆっくりと顔を近づける。


 そして、その距離はどんどん狭まっていき…。


「…」


「…」


 唇と唇が触れ合うだけの浅い口づけ。ただ、それだけでも俺たちはとてつもない幸福に包まれた。

 だが、それでは足りないと今度は恍惚とした目をしたままサナが迫る。


 舌を交える深い口づけ。そのまま、俺たちは互いの存在を確かめ合うように互いを求めあう。


 そうして、この日、俺たちは一つになった…。



最後まで読んでいただけるだけで感謝です。


前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。



「報告」

 ここまで、ある程度定期的に更新してきたのですがそれも難しそうなので不定期更新になると思います。すみません。できるだけ一週間に一回は更新するように頑張りますので、今後もどうかよろしくお願いします。


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