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第三篇:勇者篇 第二章 誰が妻でしょう(4)


 メイドのサナの自室にはドアを見つめる二人の姿があった。


「抜け駆けはさせないわよ」


 スフィアはサナの方に向き直り、背中の翼を広げまるで威圧するかのようにそう言い放つ。


「何のことでしょうか」


 一方、サナも何でもないようにその威圧をサラっと受け流す。

 魔王に次ぐ、または同等の実力をもつスフィアにそんなことができたのかというと、すべてを知っていたからだろう。

 なぜ、スフィアがここに居るのか。なぜタイミングよく部屋へ入ることができたのかを。


「まぁいいわ」


 そういうと、翼を戻すスフィア。


「ただ、呼びに来たというのは本当よ。まぁ、呼びに来たのは旦那様ではなくあなただけれど」


 さすがにそこまでは予想していなかったのか、少し驚きながら「なぜでしょうか」と疑問を口にする。

 すると、ビシッとサナに向けて指をさすと…。



 ――― 会議をするからよ ――― 



 そう言い放つスフィアの瞳は闘気に満ち溢れていた。




 数刻ほど前に教会に対する会議が行われた部屋の机を、未久、ルーシー、スフィア、サナ、ミーシャの五人が囲んでいた。

 そして、この部屋全体はとてつもない緊張感が包んでいた。もし、この場所に何も知らない人が入ってきたとしら、今にも殺し合いが始まるのではないかと錯覚するほどだ。


 事実、未久、ルーシー、スフィアは魔力を放出しお互いを牽制しあっていた。

 だが、それもこの会議の主催者である未久が声を上げることにより終わりを告げる。


「それでは、第一回絶対に正妻は譲らない、お兄ちゃんの妻は私だ会議を始めます」


 その宣言を皮切りに、血みどろの戦いが開始された。というわけもなく、普通に話し合いが始まった。

 直後、挙手をしたものがいた。それは意外にもミーシャであった。


「はい。ミーシャ」


 未久が発言の許可をすると、ばつが悪そうに疑問を投げかける。


「あのぉ、なぜ私は呼ばれたんでしょうか」


 それを聞いた瞬間、他の者たちはそろって「そう言えば」と今気が付いたようだった。

 すると、未久がなんの悪びれもなく。


「何となく」


 以上だった。


 それだけ言うと、「それでは改めて始めたいと思います」と会議を無理やり進めた。

 ミーシャはというと、口をポカンと開けたまま固まっていった。


「それで、何を離そうというのじゃ。それに、わ、我もなぜ呼ばれたのか分からんな。わ、我は別に海斗のことなど何も思っておらぬ」


 ルーシーはあからさまに取り乱しながら言う。


すると、未久はいたずらな笑みを作りながら。


「へぇ、そうなんですか。私はお兄ちゃんに気があると思った人達を集めたつもりだったのですけど、そういうことなら残った人たちで決めるんで出てって大丈夫ですよ」


 そうあからさまな言い方でルーシーを挑発した。

 実際、未久は全員初めて会った時にすぐ彼女らの様子から自分の兄に彼女らが好意を寄せていることは看破していた。


 というか、彼女らの態度があからさますぎるのだ。ちらちらとサナ以外の全員が海斗のことを見ていたのだから。

 ちなみにサナはというと、態度では全くと言っていいほどそのような素振りは見せてい居なかった。


 しかし、そこはやはり重度のブラコンである妹の鼻はごまかせない。サナから海斗の匂いが他の者より濃く感じていたのだ。

 このことから、このメイドと兄には何かしら関係があると考えこの会議へと招集したのだった。


「し、しかし、彼奴の主としてそういう話は耳に入れといたほうがいいかもしれんからの。参加していくかとするかの」 


 未久の言葉に慌てて前言を撤回するルーシー。

 それをみて、一呼吸いれるとある宣言をした。


「それではまず最初に、私はお兄ちゃんのことが大好きです。家族での好きではなく、異性としてです」


 その宣言に、みんな分かっていたことではあったが多少の驚きを見せる。それを横目に未久は言葉を続ける。


「もちろんお兄ちゃんには私の事だけを見てほしいです。ただ、お兄ちゃんは最高にかっこいいですから

いろんな人にモテてしまうことも理解しています。なので、私はあなた達のこと妾としてならお兄ちゃんの横にいてもいいと思っています」


 その宣言にいち早く反応したのはスフィアだった。


「まるで自分がもう正妻であることは確定しているかのようなものいいですが、旦那様はあなたのことを一人の女性としては見ていないようでしたが」


 そういって今まで完全に未久のペースであった空気に乱れを生じさせる。

 未久もそのことは理解しているのか。悔しがりながらも、「それはその」などと口ごもりながらなんとかごまかそうとしている。


 これを好機と見たのか、一気に畳みかけるスフィア。


「さらに言えば、悔しいことですが旦那様の正妻にもっとも近いのは彼女のようですし」


 そういってサナの方を睨む。

サナはいきなり睨まれたことに驚きながらも「なんのことでしょうか」としらを切ってみせる。


その反応に、全員の敵意がサナに向いてしまう。


すると、サナはこの場でマウントを取れたのではと思い行動に移すことにする。


(彼は誰にも渡さない)


「そうですね。強いて言うなら、海斗様、いえ。海斗とは一夜を共にしたなかとだけ言っておきましょうか」


そう言って、魔王もいる中他の者たちに牽制をする。



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