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第一章 動きだす世界(7) ~ サナさん ~

 

 あの後も、ルーシーが俺につかまりながら寝ているので起こすのも悪くそのままの態勢でセバスさんと話をしていたところ、メイド三人衆が入ってきて最初はこちらに気が付くと驚いていたが、ニコニコしながらこちらを見てきた。

 そんなことをしているうちにルーシーが起きたので話を聞くと、昨夜布団に入ると俺がいたのでちょうどいいと思い、抱き枕感覚でそのまま眠りについたのだとか。


(ふっ、ついに生き物としても見られなくなってしまった)


(一人でドキドキしている俺がバカらしくなってきた。言っておくがロリコンじゃないぞ)



 その後、ルーシーは何やら会議があるらしいのでセバスさんと部屋を後にした。

 そして、それを見送る俺とメイド三人衆。だが、その三人のうち二人、サラさん、サエさんは俺に一礼してから出ていった。おそらく仕事だろう。

 残ったのはサナさん。俺の近くにまで来るとそこで待機。


(世話役だろうか?)


「…」


「…」


(んー。なんか、気まずい)


 何か話さなければと思っていると、先に口を開いたのはサナさんだった。


「海斗様。朝食はいかがなさいますか」


「あ、あぁ。お願いします」


 俺は今、起きて着替えただけの状態なのでご飯を食べていない。

 俺の返事を聞き、部屋を出ていこうとするサナさん。ふと、俺は頭に浮かんだことを尋ねてみる。


「サナさん。サナさん達はいつご飯を食べているんですか?」


「仕事の間の時間に頂いております」


「そうなんですか。ちなみに今日は?」


「すでに頂きました」


「そうですか…」


 俺の質問の意味が分からないという感じで、怪訝な表情をしながらサナさんが尋ねてきた。


「いかがなさいましたか」


「いや。一人だからものさびしいし、よかったらと思ったんだけど…」


 そこまで言って、俺は慌てて言葉を付け加える。


「あぁ、えっと、下心があってとかそういうんじゃないですから」


 すると、サナさんは嫌な顔もせず、というよりやさしい笑顔で言葉を返してくれた。


「いえ、お気になさらず。理解しておりますから」


(うーん? 何を理解しているんでしょうか…)


 俺の疑問をよそにサナさんは続ける。


「それと、わたくし共は使用人。海斗様がいくら召喚獣という立場でも、ルーシー様が人目置かれている方とそういうことは出来かねます」


「あぁ、やっぱりそうですよね。すみません」


(そりゃ、仕事中と同じだもんな。いろいろとまずいだろう)


 そう思い、もう一度謝ろうとした時「ですが…」と続ける。


「仕事として言いつけられては逆らえないかもしれませんね」


 そういいながらほほ笑むサナさん。その姿に俺はドキッとしてしまう。


(えっ、これはどういうことなのだろうか。そういうことなのかな? くっ、こんなの年齢=彼女なしの俺にこれはきつすぎる…)


 俺が考えに耽ってぽかんとしていると、サナさんが声をかけてくれる。


「とりあえず、海斗様のお食事をお持ちいたします」


 そういって部屋を出ていった。と思ったらひょこっと顔だけを廊下から出すと一言。


「これからはサナと呼んでいただいて構いませんよ」


「なっ」


 俺があからさまに取り乱すと「ウフフ」と微笑をこぼしながら出ていった。

 サナさんはあの後食事を持ってきてくれると、俺が食事中にたわいもない話に付き合ってくれた。

 朝食をとった後は、書庫へ移動してこの世界について勉強することにした。

 もちろん教師役はサナさんだ。

 そして、俺は今書庫の端にあるちょっとした机と椅子に座っており、左にはサナさんがとても姿勢正しく座っている。

 そこで、俺は目の前に積まれている本を見てふと疑問に思う。


「そういえば、なんで俺はこの世界の文字が読めるんだ」


「それはこちらに召喚された時に、この世界に適応できるよう操作されたためでしょう」


 俺の疑問に対しすぐに答えてくれるサナさん。


「この世には転生者というものがいます。一番有名なのが勇者ですね。勇者として召喚されたものは、償還の過程で力や言語力などの恩益が与えられます。今回、海斗様は召喚獣の召喚でこちらに来ましたが、本来人が現れることはない。つまり、転生召喚と同じく海斗様にもいろいろな恩寵が与えられたということでしょうね」


「サナさんは博識なんですね」


 俺は尊敬のまなざしでサナさんを見る。


「いえ、そんなことはありませんよ」


「それより、サナとは呼んでくださらないのですね」


 サナさんは不敵な笑みを浮かべながらこちらを覗きこんでくる。


「そ、それは、サナさんも俺の事『様』付けじゃないですか」


 俺はたじろぎながらもなんとか反抗する。


「職務中ですから…」


「そうなんですか」


 俺の反応に「ですが」と続ける。


「職務中ではなければ…」


 そういうと「フフッ」と笑みをこぼす。


「な、なら俺もサナさんが職務外の時はそう呼びますね」


 そう会話を交わすと、目の前の本の山から一冊抜き取り勉強を始めることにした





最後まで読んでいただけるだけで感謝です。


前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。

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