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第三篇:勇者篇 第二章 誰が妻でしょう(2)


「なぁ、スフィアよ」


「はい」


「あれはなんぞや」


「さぁ、何でしょうか」


 ルーシーはある一点を見ながらぎりぎりと歯ぎしりをする。そして、その歯ぎしりの音は部屋の隅で待機しているサナからも発せられていた。

 そして、彼女たちが見つめる先には二人の兄妹再会を確かめあっていた。


「とにかくよかった無事でいてくれて」


「私もお兄ちゃんが無事でよかった」


 普通ではありえないやり方で。


「海斗よ、さすがに距離が何というか近いのではないか」


 この場を支配している何とも言えない空気に耐え兼ねたルーシーが、兄へと声をかける。


「なんだよルーシー。お前がいろいろと話す前に久々に会ったんだから兄妹で積もる話もあるだろうって

言ったんだろう。だからこうして、絆を確かめ合ってるんじゃないか」


 俺はそういって、膝の上に座り俺に体重を預けリラックスしている未久の頭をなでる。


「えへへ、お兄ちゃんだーい好き。結婚しよー」


「こら、俺たちは兄妹なんだからダメに決まってるだろ」


ちなみに言っておくと、三久からははっきりと好意を伝えられた。まぁ、そのこともあってルーシーに話す時間をもらったのだが、さっきからみんなの視線を感じるのなぜだろうか。

 俺がそんなことを思っていると、未久はプクーっと頬を膨らませ抗議するがダメなものはだめだ。





 あの後、二つの魔力が遠ざかっていったのを確認した俺たちは未久と、もう一人魔法使いのミーシャから話を聞くべく砦へと戻っていた。

 ちなみになんでミーシャが残っていたのかというと、彼女はただ未久と同性で勇者のパーティーにいても問題ないということから、未久の御世話役として教会にやとわれただけだったらしい。


 そして、そのミーシャも目を見開きながらその光景を見ていた。


 それもそうだろう。ミーシャは初めて未久という女の子にあった時から、まったくと言っていいほど無表情で感情を読み取ることができなかった。


 しかし、今目の前の彼女はどうだろうか。光を失っていた瞳には光が戻り、それどころかだらしなく相貌を崩し、兄への愛を全身で表現しているではないか。


(あれが本当にミクなのでしょうか…)


人間である彼女が、あんまり取り乱さずにこの場所に入れるのはそれが理由だったりする。




ある程度時間が経ったところでスフィアが「旦那様そろそろ」と声をかけてきた。

その時一瞬とてつもない殺気を二人から感じたが気のせいだろう。

とりあえず、いろいろと情報を整理するため大きな机をルーシー、俺、スフィア、美久、ミーシャが囲んでいた。


ちなみにいうと、先ほどまでの美久との会話は向こうの世界ではどうだったとか、親は元気だったとか

そんな会話しかしていない。つまり、そのほかのことはまだ俺は聞いていない。


「よし、それでは始めるとするかの」


その掛け声を合図に、会議が始まった。


「それではまず、改めて二人は自己紹介を」


進行役のスフィアがミクとミーシャに促し、二人が立ち上がる。


「私は、聖都教会に召喚された勇者で滝沢美久です。お兄ちゃんの妹です」


「私はミーシャと言います。勇者であるミクさんのお世話役として雇われていました」


そう言って軽く二人とも会釈をすると席に着く。

それに続く形で、俺たちも一人づつ挨拶をしていった。そして、全員の挨拶が終わるとスフィアが緊張した顔つきになり新参者二人を見る。


「次に、お二人の立場について聞かせていただきます。本当にこのまま魔族とともに生きるのか。それとも相対するのか。別にどちらを選んでいただいても構いません、ここから逃すことくらいは可能です。ですがもし、嘘をつかれた場合はこちらも命がかかっていますのでそれ相応の対応をさせていただきます」


それを聞きミーシャは緊張に息を飲む。彼女はこれまで幼いながらも優秀な魔術師として数多の強敵と対峙してきた。しかし、この時のスフィアから発せられていたプレッシャーは並のものが浴びれば気絶するのではないかと思われるほど強いものに感じていたからだ


一方、美久はというと微動だにしていなかった。

それはもちろん彼女に取ってこれは愚問でしかなかったからだ。


一瞬にして緊張に包まれた空気を打ち壊したのはやはり美久だった。


「私はお兄ちゃんが全てです。お兄ちゃんの敵が教会なら教会を、魔王なら魔王を倒すだけです」


「わ、私はミクさんについていくとパーティに入った時決めていたので…」


二人の言葉を聞いたスフィアは確認のためルーシーに視線を送る。すると、ルーシーは軽く頭を縦に降ると椅子の上に立ち上がった。


「二人の覚悟しかとこの魔王ルーシーが聞き留めた」


こうして、正式に美久とミーシャは魔王国の一員となったのだった。




最後まで読んでいただけるだけで感謝です。


前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。

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