第三篇:勇者篇 第一章 再会(13)
「無事かの」
「あぁ」
ルーシー視覚が戻ったようでこちらへと降りてきた。
「海斗様」
「お兄ちゃん」
すると、サナと未久もこちらへとやってきた。
「二人とも大丈夫か」
「うん」
「はい」
そう返事をする二人の体を見ても、目立った傷は見られない。
とりあえず大丈夫そうか。
「お兄ちゃん…。その…」
未久は何やら気まずそうな表情でこちらに身を寄せてくる。
あぁ、そうか。
「こちらのウサギ耳の人がサナさんだ。それで、このちっちゃいのが魔王のルーシーだ」
俺が説明すると、未久は意を決したようにまずサナの前に出る。そして…。
「ごめんなさい」
そういってあたまを下げた。
「あの斬撃は私が放ったものなんです」
すると、サナさんは少し驚いた表情をしたが直ぐに微笑みながら…。優しく抱き寄せた。
「いいんですよ。仕方がありません、あなたは騙されていたのですから何も誤ることはナニのですよ」
「それでも、ごめんなさい…」
おそらく、この「ごめんなさい」は未久にとってサナさんだけに向けたものではないのだろう。
事実、サナさんが抱擁を解くと未久の目は少し赤くなっていた。
そして、今度はルーシーの方を向く。
「初めまして、滝沢未久です」
「ふむ。ルーシーじゃ」
「…」
「…」
やはり、ずっと魔王という存在を敵対視してきたからかなんとも言えない雰囲気が二人を包む。
だが、それを壊したのはみくだった。
「私は、あなたをずっと追ってきました。それでいきなりあなたは敵じゃないといわれて正直困惑してい
ます。けれど、お兄ちゃんが信じている人ならば私も同じように信じようと思います」
そういって、右手を差し出す。
「分かっておる。いきなり我を信じよというのは酷という話じゃ」
ルーシーはそういうと差し出された右手をとる。
俺たちがその姿を見ていると、いきなり居るはずのない人の声が後ろからした。
「あのぉ、私どうすればいいですか」
振り返ると、そこには先ほどの女魔法使いが立っていた。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




