第三篇:勇者篇 第一章 再会(11)
お待たせして申し訳ないです。
そして、再びこちらを向く未久。
「未久、どうしてここに」
すると、未久は一度瞼を閉じ少し考えるような素振りをするとここまでのことをぽつりぽつりと語りだした。
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お兄ちゃんがいなくなってから一週間がたった。
私、滝沢未久は最後にお兄ちゃんの姿が確認された横断歩道に毎日足を運んでいる。
お兄ちゃんがいなくなったその日から、私の世界から色が消えた。
私とお兄ちゃんはどこに行くでも一緒だった。学校に行くのも、遊びに行くのも…。お兄ちゃんはこの世界で一番かっこよくて、とっても優しい人。私の大好きな人、だった…。
警察の人の話によると、お兄ちゃんがいなくなった日にここでトラックが事故を起こしたらしい。そして、そのトラックの運転手がお兄ちゃんらしき人を惹いてしまったらしいのだが、現場からお兄ちゃんの姿は見つからなかった。警察は運転手が幻覚でも見ていたのだろうというけれど、私はそうは思わない。
きっと、何かがあったんだ。ここで、何かが。
「お兄ちゃん、どこに行っちゃったの…」
冷たい雨が、頬をつたっていく。
その時だった。
いきなり視界が白色に包まれ、気が付いた時には見たことのない教会のような場所に立っていた。
「よくぞおいでくださいました、勇者様。どうか、この世界を救ってください」
そう目の前に膝つき、手を組みながら司教のような人たちが言ってきた。
その教会のような、というか教会の人達が言うにはこの世界は私がいた世界とは別の世界らしく、私は勇者として召喚されたらしい。
そして、この世界には魔王という存在がいて、それを打ち倒すべく私が召喚されたらしかった。
そこまで聞いて、私は直感的にあることが思い浮かぶ。
もしかして、お兄ちゃんも私みたいのこっちの世界に来ているんじゃ…。
私はそのことについて教会の人に聞いてみる。
「あ、ああの、私の前に滝沢海斗って人がこっちの世界に来ませんでしたか。私、いなくなったお兄ちゃ
んを探してたんです」
すると、教会の人達はいぶかしげな顔をした後何やら集まってこそこそと話を始めた。そして、何やら確認をすると一人がこちらに近づき重たげな表情で口を開いた。
「実は、この前の戦いで魔王軍に囚われてしまいまして…。申し訳ありません」
やはり、お兄ちゃんは…。
「お兄ちゃん…」
魔王か。魔王、私のお兄ちゃんを奪った奴…。
許さない。絶対に…。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
私の心は魔王への憎悪に塗り固められた。
その後、少しだが戦闘訓練をした後、教会の騎士という二人と、私の御付ということで女性の魔法士とともに魔界へと向かった。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。
これからの更新は二日に一度(12:00)にしたいと思います。




