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第三編 勇者編 第一章 再会(7)


そう意気込んでいた俺だったのだが、あの事件が起きてから一週間が経とうとしていた。


「はぁ〜」


俺は思わずため息をこぼしてしまう。

あの後、なんとか サナさんと話をしようとしたのだが、そういう時に限ってサナさんと一緒になることがなく、休憩時間や、夜に話しかけようとしても逃げられてしまった。


「いかがなさいましたか」


それに反応してサエさんが声をかけてくれる。

今は対勇者戦に備えての魔法の特訓中だ。


「いや、なんでもないですよ。ちょっと疲れただけです」


そう言って「あはは」と笑って誤魔化そうとする。


「そうですか。ですが、魔法は精神状態にも左右される時がありますので少し休憩にいたしましょう」


「はい…」


俺としては訓練をしていた方が何も考えずに済んでいいのだが、先生に言われてしまっては致し方ない。近くの椅子に腰をかけて一息つく。

すると「お隣失礼いたします」とサラさんが座ってきた。


「これ、どうぞ」


そして、飲み物を差し出してくれる。

俺はお礼を言いつつそれを受け取り、一気に飲み干した。魔法で冷やされた飲み物が体に染み渡る。


(本当に魔法って便利だな…)


そんなことを思っていると、サラさんが「海斗様」と声をかけてくる。


「サナと、何かあったのですね」


「うっ…」


いきなり今一番気にしていることを言われ、思わず反応してしまった。


「やはり、そうなのですね」


「ど、どうしてそう思うんですか」


「そんなもの、見ていればわかりますよ」


「え?」


「だって、二人とも全然話してらっしゃらないじゃないですか。今までは、会うとすぐに話し込んでしまっていましたし」


そう言われて、俺はこれまでの生活を思い出す。

そういえば、ご飯を出してもらう時も、廊下ですれ違う時も何かしら必ず会話を交わしていたような気がするな。


「そう、ですね。あったといえば、ありました…。でも、これは話すわけにはいかないと言いますか」

俺がそう答えると、少し考えるようなそぶりをしてから「そうですか」と言って立ち上がる。そして、こちらを向き「ですが」と続けた。


「何かあったらなんでも言ってください。論理的でないことはあまり好きではありませんが、相談には乗らせていただきます」


そして、右手を差し出してきた。俺はその手を取りながら立ち上がる。


「はい、ありがとうございます」


「あ、あともう一つ言いたいことがありました」


「はい?」



「大切なものは失って初めて気がつくと言いますが…」




――― その失ったものは二度と戻らないのですよ ―――





「では再開しましょう」


そういうと、再び日差しが照りつける中に足を踏み入れるサラさん。

俺はその後ろ姿を見ながら、一歩踏み出さねばと決心するのであった。




最後まで読んでいただけるだけで感謝です。


前作「居候彼女は泥棒猫」もお願いします。

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