第三篇:勇者篇 第一章 再会(6)
あの後、サナを起こすのも悪いので俺はソファーに寝ることにした。そう、寝たはずだったのだ。
「どうしてこうなった…」
俺が目を覚ますと、俺はベッドに寝ていた。まずこれがおかしい。いったいどうしてここで眠っていたのか。
そしてもう一つ、なぜか全裸だ。どうして俺は服を着ていないのか。
最後に、布団から出ているウサギ耳。そして、少し膨らんだ布団。
「…」
(あれ? これ前にもなかったっけ)
とりあえず、俺は恐る恐る布団をめくっていく。すると、予想道理というべきか裸のサナさんがすやすやと眠っていた。
「…」
俺はそのままそっと布団をかけなおす。
(ヤッちまったぁぁぁ――――――――――――――――――――――――――)
思わず頭を抱え、昨夜のことを必死に思い出そうとする。
確かに俺はベランダで物思いにふけった後、ソファーで寝たはずだ。
「…。あっ」
(そういえば、いったん寝ようとしあとのどが渇いて何か飲もうと思ったけど、何もなくて置いてあった
お酒を飲んだんだった。確か、色合いからサワーくらいかなと思って一気に飲んだらものすごく強くて、それで…。もしかして、俺はそのまま酔った勢いで立ってしまったのか! お、俺はなんてことを…)
俺がそんな風に悶えていると、サナが目を覚ました。
「んんぅ」
寝そべったまま顔をこちらに向け、俺と目が合う。
「っ…」
そして、一気に顔を赤らめ布団の中に顔をうずくめてしまった。
「あ、あの。サナ?」
「な、ど、どうしたの」
「その…。お、おはよう」
「…うん。おはよう」
そして、しばしの沈黙。何とも言えない空気が流れる。
だが、この空気を破ったのは俺ではなくサナだった。
「じゃ、じゃあ私、仕事があるから先に行くね」
そういうと、布団からパッと抜け出し服を目にもとまらぬ速さで身にまとい部屋を出ていてしまった。
もちろん俺はその間、窓の方を見ていた。
「はぁ、本当にどうしたもんか…。あれ、でも体はどこもいたくないな。こういう事したら筋肉痛になるっ
て何かでみたような」
俺はそんな少しの疑問と、大きな罪悪感を抱えたまま着替えを始めた。
とりあえず準備をすました俺は、ルーシーのもとへと向かう。昨日のうちに朝ご飯はルーシーの部屋で一緒に食べることを言われていたからだ。
ノックをして、部屋の中へと入る。
「む、遅いぞ海斗よ。もう食べ始めておるのじゃ」
「わ、わるい」
とりあえず俺も席に着く。横目でルーシーの後ろに立っているサナに目をやるが、何事もなかったように整然ととっていた。
席に着くと、俺がスレべニア国に行く前と同じようにサナさんがご飯を目の前においてくれる。
どうやら完全に仕事モードのようでまったく先ほどまでのことは気づかせない。
「どうしたのじゃ、海斗」
どうやら俺が気にしてばかりいるようで、ルーシーが何かを感じ取ってしまったようだ。
「いや、何でもないよ」
(あとでなんとか話すしかないな)
俺はとにかく気持ちを切り替え、今日を乗り切ることにした。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




