第三篇:勇者篇 第一章 再会(3)
「あ、あのー、サナ?」
「ハイッ」
「ちょっと近くない…」
普通隣同士に座るといったら、人と人の間には少し隙間ができるはずなのだが、今はその隙間など一切なくサナが俺の体にピッタリくっついて座っている。
「ふ、普通よ」
「そ、そうか」
(え、何がそうかなんだよ俺ぇー。こんなことされたら、緊張で心臓張り裂けるわ!)
「…」
「…」
こんな状況にやはり緊張しているのか、急に黙ってしまうサナ。
そして、急にコトンと肩に頭を乗せてきた。
「ちょ、サナさんっ」
俺は流石にと思い離れようとしたのだが、できなかった。
なぜなら…。「スースー」と綺麗な寝息を立てていたからだ。
「サナ? サナさーん」
どうやら完全に眠ってしまっているようだ。
なんとなくサナの顔を覗き込む。
わずかに微笑みながら、どこか安心したかのような感じである。普段立っている耳も今はペタっと倒れリラックスした状態だ。
「可愛い寝顔してんなぁ」
そんな彼女の頭を俺は、もう一方の空いた手で優しく撫でる。すると、「んん」と可愛らしい声を漏らす。
俺はしばらくの間彼女の頭を撫で続けていた、が…。
「あの、そろそろよろしいでしょうか」
突然声をかけられた。
俺は慌てて頭から手を離し、声のする方へ顔を向ける。すると、セバスさんが気まずそうな顔でこちらを見ていた。
「ち、違うんです。これは…」
「いえ、別に気にしていませんので」
(いやいや、気にしてないって、俺はめちゃくちゃ気にしちゃうんだが。というか、その慈愛の目を向けるのやめろ)
とりあえず、俺はそれとなく事の経緯を伝える。もちろん抱き合っていたことは無しにして。
「そういうことでしたか」
「はい」
そこで、俺は少し疑問に思っていたことを口にする。
「セバスさん、今日なんかサナさんの様子が変だったんですが何か知っていますか」
そう、いつもならもっと年上感のある態度なのに今日はなんというか、違和感を感じたのだ。
しかし、セバスさんは俺の疑問に対しすぐに答えてくれた。
「それは、海斗様が無事お戻りになられたからかと」
「俺が?」
「はい。海斗様が行方不明となっていこう、彼女はずっとあなたの無事を祈っていました。毎日欠かさず。時には、夜も寝ずにいたこともありました」
「そんなことが…」
「そして、無事お帰りになられて、実際に目の前にいるのを確認して安心したのではないかと思われます」
そう言われて、俺は改めて彼女の顔を見る。よく見てみると、、目の下に隈ができているのがわかった。
「ごめんな」
そんな彼女の頭を謝罪と感謝の意を込めて軽く撫でた。
「そういえば、セバスさんは何か用事があってここにきたんじゃないですか?」
俺がそういうと「そうでした」と言って少し表情が曇る。その変化をを訝しく思いながらも彼の言葉を待った。
「実を言いますと、海斗様にお話がありまして…」
「話し?」
「はい。先にお聞きしますが、彼女、メイドのサナとは恋仲なのですか」
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




