第一章 動きだす世界(5)
その後、一糸まとわぬ姿となった俺だったが、メイドさんに頼みタオルのようなもの一枚は渡してもらうことができた。
ルーシーはメイドさんに体を洗ってもらい、言わなくてもわかるだろうが俺は自分で洗った。
そして今は幅十メートルの六角形のお風呂に使っている。もちろん俺はルーシーに背を向けてできるだけ離れて浸かっている。
(なに、このギャルゲ)
「ふぅ~」
「…」
完全にリラックスしているルーシーといろいろとガチガチな俺。はい! そこ意味を考えない。
そんな俺をよそに、何でもないように声をかけてくる。
「やはり、お風呂はいいのぉ。しかし、そうしたんじゃ主。そんな離れて座り追って」
幼児体系とはいえ、いろいろとまずいんだよ! なんて言えるわけもなく。
「いや、な、何となくここがいいかなぁ。なんて…」
「むぅ。なんじゃ、主。儂と一緒に湯につかれるものなんぞおらんのじゃぞ? 光栄に思うのじゃ」
(そうか、誰でもするんじゃないのか。ちょっといろいろ焦ったわ)
「ん? じゃ、じゃあなんで俺は入れてくれたんだ」
「んー。…なんでじゃろうか。なんとなくじゃ」
(て、俺は何聞いてんるんだ? くっ、目の前にロリの道が…。もう一度言っておこう。俺はロリコンじゃない)
「さて、そろそろ上がるかの」
そういうとパンパンと手をたたく。すると、先ほどのメイドさんたちがどこからともなく出てくる。そのメイドに目をやると視界に一糸まとわぬルーシーの後ろ姿が入り込んでくる。
俺はまたもや急いで背中を向ける。
後ろから、かすかに聞こえる布のこすれる音をからあふれる自分の煩悩を何とか鎮めることに努める。
着替えが終わったことを確認すると俺も湯船から上がり用意してあった服に着替える。その時、メイドさんが「立派」とか「まぁ」とか言ってたが。
(うん。俺は何も聞いてない)
着替え終わるとルーシーと一緒にお風呂場から出て先ほどの部屋へと戻る。
しばらく部屋でソファーに座り待っていると、先ほどのメイド三人衆がワゴンにご飯を乗せてやってくる。それを見たとたん子どものように目を輝かせるルーシー。
「おぉ! 待っておったぞ」
こういう姿を見ると、ほんと子どもっぽいなぁと思う。ちなみに、先ほどの時間に尋ねてみたところ八十五歳だそうだ。年齢のことだからちょっと怒られるかと思ったけど普通に話してくれた。
やっぱり魔族というのは長命らしく、ルーシーは若いほうなのだろう。
そんなことを考えているうちに次々と料理のさらが並べられていく。見た感じロシア料理に似ている気がする。なぜそう思うのかというと、まず赤い色のスープがある。これくらいならいくら俺でも知っている、「ボルシチ」というやつだ。そして、この楕円形のパンのようなものがピロシキというやるだろう。
まぁ、ここでは何というのか知らないが。
あとは、カレーみたいなやつとか魚の切り身見たいのが並んでいるがよく分からん。
そして、驚くのはその量だ。十人前くらいあるんじゃないかと思うくらいの量がテーブルの上に乗っかっている。
「美味なのじゃ」
「まじかよ…」
その料理はまるでブラックホールのように小さな少女の体の中に吸い込まれていく。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。