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第2章 王国編 エピローグ(1)



一人の女性が城の前に置かれた簡易の演説台に登る。彼女の名前はエリス。この国を治める王であり、おそらく世界の形を変えるであろう人物の一人である。

そして、彼女の目の前には沢山の国民が集まり、彼女の言葉を待つ。だが、彼らの瞳に映るのはとても王に向けるような視線ではない。一言で彼らの瞳に映っている感情を表すとすると、疑念と不安であろう。


「まず初めに、皆に私は詫びなければならないことがある」


その言葉に一瞬どよめく観衆。


「ここにいる彼は、まぎれもない魔族側の人間だ。私はそれを知っていながら皆に黙っていた。本当に申し訳なく思う」


先ほどのどよめきがさらに大きくなる。しかし、エリスはそれを鎮めるように声を張る。


「しかし、この国を守ってくれたのも彼だ。皆も知っているように、私は汚職にまみれた大臣達の謀略により一度は命を落としかけた。政権も奪われかけた。それでもここに立っていられるのは彼らのおかげだ」


その言葉にエリスの後ろにいる、俺やルーシー達に視線が集まる。


「たしかに我々は今まで、散々殺し合い、傷つけ合ってきた。戦争で大切な者を失った者も少なくないだろう。だが、あえて言わせてほしい」




――― 憎しみからは、憎しみしか生まれない ―――




「我らに家族がいるように、彼らにも家族がいる。戦争なんてしたくない、それはお互いに思っていることだ。ならば何故戦う、何故傷つけ合う。時代は変わるのではない。我々が変えるのだ。今こそ、魔王国と停戦の約束を誓い何十年、何百年と続いた戦いを終わらせようではないかっ!」


「…」


エリスがそう演説を締めくくっても、広場に集まった国民は皆押し黙ったままである。そして、その表情はなんとも言えない感情が溢れているようだった。

王が変わり、何故か大臣が政権を握ったと思ったら、今度は戦争は終わりにしてこれまで仇であった魔族と仲良くしようと言われたのだ。これで素直に「ハイそうですか」と言えるわけがないだろう。

エリスは思わず歯ぎしりをする。


(やはり、ダメか…)


さらに沈黙が続き、もうダメだと諦めかけた時だった。


『パチパチ…』


広場のどこからか手を叩く音がした。そして、それは波のように周りに広がっていきいつのまにか広場全体へと伝染していた。

エリスはその光景を見て、驚きながらも国民に向かい軽く会釈をした。

その時、地面に光るものが落ちたのを俺だけが見ていた。




最後まで読んでいただけるだけで感謝です。


前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。

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