第二章 王国編 (31)
王国、執務室。
「どうなっているんだ! 早く情報をよこせ」
執務室に怒号がとんだ。先ほどから城内ではせわしなく兵士が動き情報の収集、伝達に奔走していた。
では、なぜこれほどにも城内が荒れているのか。それはもちろん、ルーシー達の影響に他ならなかった。
「なぜこの厄介なタイミングで魔王軍が動くのだ」
王女エリスと、あの謎の少年を国民の目の前で陥れ勝利を確信し、先ほどまで愉悦に浸っていた大臣のザクロは悔しさと怒りから机を叩く。
「報告します。国境沿いに約五万の大軍が陣を敷いています。開戦まで一刻の猶予もないとのこと。以上」
伝令の兵士はそれだけを伝えると、急いで部屋を後にし、また別のところへと向かった。
「五万…。五万だと。そんな余力あの国にあるわけがない。なのになぜ…」
ザクロは敵軍の総数を聞き耳を疑った。何故なら、未だ人間の国では魔王の国が三つに別れていると思い込んでいたからだ。
ルーシー達は、いままで全方位に兵を割いていたがその必要がなくなった。故に、この大規模な作戦が実行できたのだった。
「クソ、あのクソ女め。国を売りおったな」
すると、執務室に人が現れる。
「どう言うことだねこれは」
軍務大臣だ。
「おそらく本当に奴らは魔王軍のものだったと言うことだよ」
「それは…」
「これはもう戦争だ。政戦ではない。今日くらい仕事をしろ、サボり将軍」
「貴様…。これが片付いたら覚えておくんだな」
そう言って、軍務大臣は怒りにかたを震わせながら部屋を後にする。
「覚えておくのは貴様だ。これが終わった後に貴様の居場所などない」
軍務大臣が出て行った後の扉を睨みつけながら、そうこぼす。
「なんと言うことか…」
ふと、窓から外の森に視線をやり詰めの甘さを感じていたザクロの元にさらなる情報がもたらされた。
――― 報告します城下に反逆者エリス、滝沢、
ならびに魔王と思われる者と翼人が現れました ―――
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




