第二章 王国編 〜 30 〜
「して、状況はどうなっておるのじゃ」
あの後、とても口にはできないような戦いがあったが俺はもう思い出したくも無いのでなにも語らないでおく。
そして、戦いを終えた彼女達と俺は、焚き火を囲み魔獣の丸焼きを頬張りつつ状況の整理をする。
「アリス、あぁ、もう一人の姫さまについてはすぐに命を狙われる危険はないと思う。彼女は奴等の神輿だからな」
俺はルーシーがいるのでわざと言葉を変えてそういう。
「うむ、そうだな」
それにエリスも賛同の意を示す。
「じゃあ、どうやって政権を取り戻すかだけど…」
そこでルーシーが「我に考えがある」と声を上げる。俺が内容について聞くと。
「それはな、我々が攻め入るのじゃ」
そんなとんでも発言をしてきた。
「おい! ルーシー、こんな時になにを「待て」」
俺がルーシーの側から見ると卑怯な戦いに文句を言おうと口を開いたが、それを制止するように間に割り込
む。
「そなたには何か考えがあるのだろう。まずはどんな内容か聞こうではないか」
俺はエリスのその言動に「自分の国が責められると言うのになにを」と少し訝しんだが、彼女の意思が宿ったような瞳をしていたのを見て何も言わないことにした。
俺たち二人の様子を確認したルーシーはスフィアに視線で説明するよう促す。それに応えるように一歩前に出ると説明を始める。
「失礼ながら…。簡単に申しますと、軍で脅して明け渡してもらおうと言うことです」
「簡単にしすぎだろ!」
俺は説明に対し思わず突っ込んでしまう。
(だってそうじゃん、なんかさっきまですごい策略ありますよオーラメチャクチャ出してたやん)
内心そんなことを思っていると、エリスが説明に対し「やはりか」と答えたところ今度は思わず吹き出してしまった。
「おい、お主。なにをわろうておるのじゃ、しっかり考えんか」
(いやいや、考えると言うか、ただの脳筋プレイじゃねーか)
それについて指摘しようとしたのだが、残りの二人も「なんでこいつ笑ってるの?」みたいな感じの顔をしていたので、なにも言わないことにした。
話を進めて良いと判断したスフィアが続ける。
「すでに我が軍は国境沿いまできており、いつでもこちらまでくることが可能となっております」
「なんと仕事の早い」
スフィアの説明にエリスが驚きを示す。
だが、そこでふと俺は疑問に思う。あまりにも仕事が早すぎではないかと…。
「なんでこんな早く動けたんだと言う顔じゃなぁ」
すると、俺の様子を見て心を呼んでくるルーシー。そして、「それはの」と説明してくれる。
「お主と儂の間には契約によって見えないパスみたいなものが通じておる。故に、細かいことまでは分からぬのじゃが、命が危ないことや疲れていることくらいの大まかなことはわかるのじゃ。だから、お主と話したあと念のためと思い用意しておいた。そして、急にお主の傷が増えていくのを感じ取れたのでな、軍を動かしたと言うわけじゃ」
そう言い終えると、「どうじゃ、凄いじゃろぉ」と自慢げな表情のルーシー。いつもなら「やれやれ」といった感じになるのだが、今回ばかりは本当にルーシーのおかげで助かっているので素直に褒めてあげた。
すると、スフィアが近づき何か耳打ちをする。
「本当は心配で、消息がつかめなくなった日からずっと軍を待機させていたことは言わないんですか」
「なっ!」
スフィアがルーシーに何か言ったと思ったら急にルーシーが暴れ出したので、エリスと顔を見合わせ、首をかしげる。
そのあと、再び始まった二人の喧嘩を見ながら少し疲れた体を休める俺であった。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




