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第二章 王国篇 (29)


「いかにも、我は魔王ルーシー・ソフィリアである。そういう貴様は人の国の姫だったかの」


するとエリスは、血で汚れたドレスの裾を持ち軽く会釈する。


「お初にお目にかかる。私はスレベニア王国女王、スリビア・エリス・リフィーリアだ」


そう言って挨拶を交わす。

はたからみるとただの社交場の挨拶のようにも見えるが、俺はとてつもなく焦っていた。その理由はもちろん、人間界と魔界の王同士が顔を合わせているのだ。なにも起きないはずがあるだろうか、いや無い。


「…」


「…」


しばし黙って見つめ合う二人。

今にも殴りかかるのでは無いかという恐怖感に見舞われる。

そして、その緊張に耐えかね俺がなんとか二人を取り持とうとした瞬間、エリスが一歩踏み出した。


「お、おい待て…」


俺が慌てて止めに入ろうとする。

だが、次の瞬間、動きを止めることとなる。なぜなら…。


「すまなかった!」


そう言ってエリスはルーシーに頭を下げたのだ。


「なにを…」


その行動に俺は意味がわからなかったが、ルーシーはただ下げられたエリスの頭を見ていた。それがさも当然であるかのように。

エリスはそのまま頭を下げたまま続ける。


「私のせいで、君の大切な部下を傷つけて、いや、殺しかけてしまった。本当に申し訳ない」


それを聞いたルーシーは、一歩踏み出しエリスのすぐそばに近づく。そして、肩に手を置き語りかけた。


「頭をあげるが良い」


「…」


そう言われてもまだエリスは頭をあげない。


「もともと彼奴が自分で選びこうなったのだ。傷つくことも、死ぬことも覚悟の上でな。だから気にすることでない。それに、我はお主に感謝しておるのじゃ」


そう言ったところで、「えっ」と顔をあげるエリス。


「彼奴は人間といえども魔界の者。人間界のお主らからしたら忌むべき存在。排除の対象じゃ。だが、お

主のようなもののおかげで彼奴は生きておる。まぁ、先ほどまで死にかけていたがな」


そう言って「カカカッ」と笑うルーシー。

それを見て、先ほどまで緊張した面持ちだったエリスにも安堵と喜びのような感情が読み取れた。

そして、どちらともなく右手を出すと固い握手を交わしたのだった。

俺がそれを感嘆な思いで見ていると、肩を「ポンポン」と叩かれ…ずに、いきなり後ろに引っ張られた。

そして、気がつくとルーシー達から見えない木の陰におり、そして目の前には。


「あぁ、おひさしぶりでございますぅ、旦那さまぁ〜」


「はぁはぁ」と息を荒くしたスフィアが俺の正面から抱きつくような形でいた。


「お、おぅ。お久しぶり、だな」


俺はそんな彼女に気圧されながらもなんとか言葉を返す。


「はい、旦那様と連絡が取れなくなってから心配で心配で、もうどうにかなってしまいそうでしたもうどうにかなってしまいそうでした」


そう言いながらさらに詰め寄ってくるスフィア。すでに顔がくっつきそうなほど近づいており、そして、そこまで近づかれるとスフィアの立派な胸がもろ触れることになっており俺の理性が崩壊しそうなわけで。

さらに、これまで俺に会えてなかったからか少し目がとろんとして、頰もちょっと紅くて、なんかこうエロい感じになっておりそれがさらに俺を追い詰める。

そんなことを知ってかしらずか、スフィアは両手で俺の顔を固定するとそのまま顔を近づけてくる。


「ちょ、スフィア! まt」


俺が制止を呼びかけるもどうやら聞こえてないらしく、さらに距離は縮まる。


そして、スフィアの唇が俺の唇にそぉっと近づいていき…。


『ヒュン』


突然目の前を雷光が走った。そして…。


「なにをしておるのじゃ?」


「ほほぅ」


とても笑っているようには見えない笑顔のルーシーとエリスがいた。


「くっ。あと少しだったものを」


そんなルーシー達に怒気を放つスフィア。

両者とも「ぐぬぬ」と唸り声をあげて睨み合うその真ん中にいて、生きた心地などせず、ただただいつ逃げ出すかしか考えられない俺であった。




最後まで読んでいただけるだけで感謝です。


前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。

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