第二章 王国篇 (26)
「案外、楽に事が進んだな」
大臣室でソファーに腰を掛けながら、対面するザクロにそういうのは今回の警戒苦の一員である、軍務大臣のジルである。
「まぁ、所詮は子供ということだろう。こうなってしまってはあの老骨も動けまい」
そういってきたない笑みをこぼすザクロ。
「ところで、もう一人の王女はどうしている」
「あぁ、それなら部屋に押し込んであるよ。部屋の前には見張りもつけている」
「それなら安心だな。あれは儂らにとって大切な手ごまだからな」
勝利を確信したザクロは、思わずにやけてしまう顔を手で覆う。
(あとはあの二人を捕まえて、国民の前で処刑すればこの国は我々の思うがまま…)
ザクロは街を見下ろしながら、この後訪れるであろう自分の時代に期待を膨らませるのであった。
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「はぁ、はぁ…。とりあえず、ここまでくれば一旦大丈夫だろう」
「海斗、早く治療をせんと」
あの後、町を抜け魔王療法面の森へと逃げてきた俺たちは、木の陰に身を隠しつつ一息つく。
「大丈夫だ、エリス。心配すんな」
俺の様子を見て、顔を真っ青にしているエリスにそう言って落ち着かせようとする。がしかし、今の状態を見てエリスが落ち着くわけもない。なぜなら…。
「大丈夫なわけがなかろう。海斗、お主、全身が血でまみれているではないか」
そう、俺は逃げている途中幾度となく追っ手に襲われ、エリスを庇っていることおあり攻撃を捌ききれず、何回も攻撃を受けてしまった。
頭からもちが出ており、右手は腱をやられたのかピクリとも動かすことができない。右足も深く切られており、歩くのもつらい状況だ。その他にも多数の傷を受けており、血がどこからともなく流れ続けている。
こうなってしまっては、俺の魔法では回復することは不可能である。
「ごめん、エリス。俺の不注意で、計画がおじゃんになっちまった」
俺は木にもたれかかりながら謝罪の言葉を述べる。
「そんなことはどうでもいい。気になどしていない」
「いや、俺の考えが浅かったんだ、グハッ」
「もう話すでない。傷が開くだろう」
エリスは、白くきれいなドレスが血に汚れることなどまったくにせず、俺の出血を止めようと、大きな傷口を手で押さえる。だが、一か所を抑えるとほかの場所からの出血が悪化する。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




