第二章 王国篇 (25)
「これはこれは、海斗さん。いや、魔王の手下とでも呼んだほうがよろしいですかな」
俺が反論しようと口を開きかけたが、それよりも早く声を上げたものがいた。
「違うんだ大臣」
エリスだった。
それは、俺にとってはとてもうれしい発言であるがこの場においては最悪の一手だった。
「ダメだエリス」
そのことを伝えようとするが、口から出た言葉は取り消すことなどできない。
「おや? いかがなさいましたか王女様。まるで彼の正体を知っていたような発言ですが、どういうこと
でしょうかね」
まるでこうなることを予想していたかのように、ザクロは言葉を述べていく。そして、なぜかその声は魔法によって拡張されており広場の国民に聞こえるようになっていた。
「いや、そういうわけでh」
エリスが反論しようとするが、こうなっていしまってはもう遅い…。
「いやはや、あなた様はこの国の民がどれほど魔王を憎んでいるかお知りのはず。それなのに、あろうことか魔王側とつながっていたとは…」
はたから聞けばただの揚げ足取りでしかない。しかし、場所が場所だけに国民は魔王という言葉に過敏に反応する。
俺は、時間が、ザクロが言葉を放つたびに広場の雰囲気が徐々に変わっていくのを感じていた。
「そんなものは言いがかりだ。私は魔王とつながってなd」
「では、何もないというなら、それが証明されるまで私たちに従っていただきましょう」
この時、俺は気が付いた。ザクロはすべて計算していたのだと。
俺がエリスを守るために体を張ることも、その後のエリスの行動もすべて…。すると、このままだとまずいことになるかもしれない。
そう思った瞬間、俺は「分かった。従おう…」と苦渋の顔で答えるエリスを抱きかかえ、城のバルコニーから飛び降りていた。
「海斗っ、なにを」
急なことに驚いたエリスが腕の中で声を上げる。
「すまない、エリス。今はとにかく落ちないようにしがみついていてくれ」
それだけ言うと、俺は強化魔法を重ね掛けし城の凹凸に起用に足をかけ下へ下へと下っていく。
地面には既に兵が待ち構えているのでうまく建物を使い、飛び移りながら城下町の方へ走り続けた。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




