第二章 王国編 〜 雲行き 〜
「それを必死になってアリス様が止めるように、お前を信じるようにと頭をおさげになられたのだ。一国の王女がだぞ」
俺はそれを聞いた瞬間、驚きを隠すことなどできるはずもなかった。
それもそのはずである。今までの俺に対しての態度から、俺のことを殺したいほど嫌っているのだと思っていたのだから。実際に殺されかけたし…。
「そんな王女様に頭を下げさせるような男を信用しないわけにはいかんだろう」
そこまで言うと「まったく、エリス様のことばかりだったアリス様をどうやってあそこまでさせたのか…」と意味の分からないことをボヤいていた。
「そんなことが…」
事のすべてを聞き、俺は自分のあまさを反省する。
「これで海斗さんはアリス様には頭が上がらなくなってしまいましたね」
そんな俺に、同じく事の顛末を把握したミリアさんがいたずらに微笑みながら語り掛けてきた。
「えぇ。まぁ、今度また会ってもまた憎まれ口をたたかれるんでしょうけど」
その後、俺たちは今後のことについて確認しながら終始和やかに過ごしたのだった。
〈メモ〉対策
・議会はセルジョア産業大臣を中心に資本主義派の人間をまとめる。
・エリスが即位次第、早急に他大臣を解任する。
・即位の式典時が一番何かしらの危険が高まると考え、海斗も参加
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城の地下。
「即位の式典の日程が決まった」
薄暗く、ロウソクの灯火だけが周りを照らす部屋の中、二人の男性が佇んでいる。
おそらくこの暗さでは相手の顔を十分に認識することはできないであろう。しかし、この環境は彼らにとっては安心感を与えていた。
「そうか…」
もう一人の男が頷く。
「こうなってしまってはいた仕方ないだろう」
「そうだな。せいぜいうまくいくよう願うとするか」
「うまくいくに決まっているさ。もし一つ目が失敗しても、二つ目で確実に落とせる。あの情報は確かだからな…」
「なるほど、それは期待して良さそうだ」
そこまで言ってどちらともなく笑い出す。
そして、その不気味な笑い声はしばらくして男たちとともに消え去ったのだった。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




