第二章 王国編 (20)
「ど、どういうことだ」
時間がたったことで、自分を取り戻した俺は率直な疑問をそのまま口にした。
(大臣がいきなり笑い出したと思ったら、エリスがいきなり出てきてどうなってんだ)
俺の質問に対し、答えたのは意外にも先ほど一緒に驚いていたミリアだった。
「実はこの会談は、大臣を通しての海斗さんの最終試験のようなものだったんです。本当に信用たる人物かどうかなどを図るための…」
「な、なるほど」
「ですが、私もエリス様がお聞きになっていたことは存じ上げませんでしたが」
ミリアがだいたいの概要について話すと、大臣が補足して説明をしてくれる。
「そなたが悪い人でないことは既にエリス様やアリス様から聞いておった。しかし、私としては国の命運を分ける争いの関係者には、私自身の目で見分けておきたかったのだ。しかし、まさかあんなことが聞けるとはのう」
大臣はそういって顔をほころばせると、いかにも王女様といった華やかではあるが、先ほど王がお隠れになられた関係で黒色に統一され、バラのような花があしらわれたドレスを身にまとい、なぜか頬を少し紅く染めたエリスを見やる。
「そ、そうだな。 まさか海斗もそのように思ってくれていたとはな、嬉しく思うぞ」
そう言って、いつもの騎士であるかのような凛々しい態度は身を潜め、先ほどよりも少々頰を紅くしながら恥ずかしがるような仕草を取るエリス。
そんな彼女に内心、ドキッとするのと同時に違和感を覚えたがそこまで気にすることでもないだろうと思い直した。
「とりあえず、ことの経緯はわかりました。それで、俺はどうだったんでしょうか」
「どうだったかね、大臣」
俺の言葉を聞いて、エリスが大臣に尋ねる。
すると彼は少し微笑みながら。
「君を、同士として受け入れよう」
「本当ですか」
「あぁ。まぁ、欲を言うと君の秘密についてもさっき言ってくれていたらよかったがな」
そう言って「わははは」と笑う大臣。
だが、俺は笑っていられるわけもなかった。なぜなら、今、彼は秘密を知っているような口ぶりの発言をしたからだ。
「な、何故それを…。それにそのことを知っているならどうして俺のことを…」
俺はいわれもしれない謎の恐怖感のようなものにに支配されながら尋ねる。
「それはな、アリス様が教えてくれたからじゃよ」
それを聞いた俺は、アリスがやっぱり俺のことを信用できなくて話したのだと思ったのだが、それは時期尚早であるとすぐに知る。
「私はそれを聞いた時、とてつもない恐怖を感じた。なんたって我々人間はこの戦争で強大な力を持つ魔族に押されているのだからな。そして、私は今すぐにでも殺すべきだと思った。いくら国の恩人と言えどもな…」
「殺す」その言葉を聞いた瞬間、俺の身体を何か電撃が走ったかのような感覚を覚えた。
そして思い出し、実感させられる。自分は人間であって、人間ではなおと言うことに。
しかし、同時に疑問も生まれた。では、なぜ俺は認められたのかと言う。
そんな俺の疑問を察したかのように「だがな」と話を続ける大臣。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




