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第二章 王国篇 (19)


その日の夜遅く、俺は王城のとある一室へと訪れていた。

そして、今。俺は白く長いあご髭をたくわえ、ているにも関わらず、頭部がものさびしいご老人、セルジョア産業大臣との話し合いの場にいた。

 俺と大臣が対面した形で座り、ミリアさんは仕いの立場ということで俺が座っている後ろに立っている。


 王様がお休みになられた直後ということもあり、この場は異様な緊張感と重い空気に満たされていた。

 その空気を緩めるような優しい声で大臣が口火を切った。


「君がエリス様を助けた男か」


「はい。滝沢海斗と申します」


「して、君の話というのは何かね」


 そんな優しい声とは裏腹に、まるでこちらの真意を探るかのように様子をうかがってくる。


「それは、エリス様の危機についてです」


「ほう」


「今、彼女が危険な状態にあるのはご存じのはずです。私には政治的駆け引きはよくわかりません。しか

し、私はそれなりの力は持っているつもりです。ですので、私に彼女の警護をさせていただきたいのです」


 俺は、ここまでに考えてきた自分にできる最善のことを述べて見せるが、未だ大臣の顔に変わった様子は見れない。


「なるほど…。それで?」


「えっ」


 予想外の反応に思わず困惑してしまう。

 そして、困った俺はチラッと後ろに視線をやりミリアさんの様子を見るが、まったく動揺したような様子はなかった。どうやら、初めに打ち合わせか何かされていたようだ。

 質問の意味が理解できなかった俺は、たまらず聞き返す。


「それでとは」


 俺の問いに対し、大臣はまっすぐこちらを畏怖させるかのように言葉を発する。


「お前が何をしたいのかは分かった。しかし、それでお前に何の得がある。何のためにそんなことをする

のだ」


 そこまで言われ、俺は気が付いた。

 俺が、信用に足る人物かどうかを。もし、ここで返事を間違えばこのまま城だけでなく国からも追い出されるかもしれない。そんな雰囲気が彼からは感じ取れた。


「俺は…」


 そこまで言って、言葉に詰まる。


 そして、瞼を閉じ、もう一度これまで過ごしてきたエリス、そしてアリスとの日々を思い返してみる。

 アリスとはごく最近であるが、エリスとは何日もの間共に過ごしてきた仲である。一緒に狩りをしたり、ご飯を食べたり、それだけでなくいろいろな話をしたりもした。一緒に歌を歌いあったりもした。

 そして、この国に入り、もう一角面の彼女と志を知った。


 だから、俺は…。


「俺は…。最初はアリスにあることネタに脅されてエリスを助ける約束をした。でも、俺の知り合いに言わ

れたんだ。逃げるなって。本当の気持ちは自分の中にあることは理解していても認めようとはしなかったんだ。でも、今は、今ならはっきり言える。何日もともに日々を超えてきた中で俺はエリスが大切な存在になっていた。だから。だから、俺はエリスを助ける」


 俺は王女という敬称も忘れ、自分の中の者を吐露していた。


「…」






最後まで読んでいただけるだけで感謝です。


前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。

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