第二章 王国篇 (18)
「もしかして、海斗さんのあれのことについてですか」
先に濁しながらであるが言われてしまった。
「ひょっとして、アリスから聞きましたか」
「はい」
「…」
「…」
そこで、俺は押し黙ってしまった。なぜなら、本来敵である存在と一緒にいるのだ。しかも秘密にされていたときたら誰もが複雑な気持ちになるであろう。
「すみません、黙っていて…」
だが、ミリアさんの反応は意外なものであった。
「いえ、特に気にしていませんよ」
「えっ」
「私は別に魔族に大切な人とかを殺されたわけでもありませんし。それに、アリス様が信じている御方な
らば、私が信じない理由はありませんよ」
そういって、ほほ笑むミリアさん。
「そうですか。そういっていただけると助かります」
「はい。でも、みんながみんな私みたいな考えをしているわけじゃないのでくれぐれも気を付けてくださ
いね」
「そうですね」
だが、この時。俺はまだ気が付いていなかった。
既に、この城の中では様々な陰謀が動きだしていたことに…。
その後、俺たちは一応別れて王室の方へと向かった。
王室に向かうと、いったん部屋の外で止められてしまったがアリスの計らいで通してもらうことができた。
中に入ると既にエリスとアリスが来ていた。アリスの後ろにはミリアが控えていた。
そしてベッドには今にも息絶えそうな様子で、王様が横になっていた。
「お父様」
エリスが声をかけると、わずかに顔を動かし反応を示す。
「エリスよ…。お前には苦労を掛けるかもしれんが、この国を、頼むぞ」
そういって片手をあげる王様の手を、エリスが両手で大事そうに握る。
「分かっております。必ずや今よりも良い国へとしていきます」
軽くうなずくと、今度はアリスを呼ぶ。
「はい。ここに」
「アリスよ。お前にはエリスをいろいろな面で支えてやってほしい」
その言葉を聞き、エリスの手の上にさらに両手を重ねるアリス。
「もちろんです。お姉ちゃんは私が守ります」
それを聞き、わずかに微笑み二人を見る王様…。
その後、しばらくしてまるで眠りにでもつくかのように瞼を閉じると、息を引き取った…。
享年六十五歳であった…。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




