第二章 王国篇 (17)
高校時代、俺は野球部に所属していた。そこで、俺はピッチャーをやっていたが、いつもいつも、「打たれたらどうしよう」「外れたらどうしよう」「当てたらどうしよう」そんなことばかり考えていた。
そんな俺が投手として生き残れるわけもなく、ファーストへと転身した。だが、俺のこの不安症が変わるわけもなく、練習や試合での一つのミスが二つに、三つになり、そして、俺はボールを投げられなくなった…。
形は全然違うかもしれない、だが、今ここで逃げてしまったら俺はずっと何も変わらないまま、今度は二度と取り戻せないものを失ってしまうかもしれない…。
『…』
俺は、覚悟を決める。
『俺、やるよ。もう、逃げない。自分からも、何からも』
『そうか。よくいったぞ海斗よ。まぁ、しくじった時は我に連絡するがよい、童がどうとでもしてくれる
わ。童は魔王じゃからな』
ルーシーのその言葉に、俺は肩から何か重いものが取れた気がした。
『そうだな、その時はたのむよ魔王様』
『まかしとくのじゃ』
俺は、魔法でつながった遠くにいる一人の魔王に感謝の念を抱きながら部屋のドアノブに手をかけたのだった。
部屋を出ると、何やら城の中が慌ただしくなっていた。
ちょうど、目の前を侍女が慌てて通り過ぎるところだったので申し訳なく思いながらも呼び止める。
「何かあったんですか」
そう尋ね、ようやく気が付く。彼女の顔が真っ青になっていることに。
そして、悲壮感に満ちた声でこう口にした。
「陛下が、危篤だそうです」
「なっ…」
彼女はそれだけいうと「失礼します」と言って去っていった。
彼女が去った後、俺もある場所に向かって走り出していた。
(まさかこんなに早く王様が倒れるなんて思っていなかった。これは俺たちの方に有利だが、そうなると相手側が慌てて何をしてくるかわからないからな)
そんな想定を考えつつ、走っているうちに向かっていた部屋の中からちょうど目的の人物がでてきた。
「ミリアさん」
俺の存在に気が付きこちらを向く。
「海斗さん。その様子ですと、すでにお聞きのようですね」
俺の様子を見て何をしにきたのかを悟ったようだ。
「はい。このままだと、大臣たちが何をしてくるかわかりません」
「そうですね。多少の無茶はしてくるかもしれません」
「とにかく最優先は、二人の王女様を守ることを最優先に考えましょう」
「はい。それと、早めに海斗さんにはセルジョア産業大臣にあっていただきます」
「セルジョア産業大臣?」
初めて聞く名前に思わず聞き返してしまう。
「朝に話した、唯一こちら側の大臣になります」
話を聞くに、このセルジョア大臣というのは先代の王様から仕えている人らしく、とても賢い人でもあるらしい。
「分かりました。それと…」
そこまで話し、俺は命を預けあう仲で秘密を隠しておくのはよくないと思い自分の正体を明かす決意を決意したのだが…。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




