第二章 王国篇 (10)
「すまないが私はいろいろと事後処理があるのでな、アリス」
「はい、お姉さま」
二人でエリスと別れた後、謁見の前に通された部屋とは別の部屋に案内された。
ちなみに案内はアリスがしてくれた。
部屋の中に入ると、いかにも高級そうな家具などが置かれえており少々動揺してしまう。
「な、なんかすごいな」
そうぼした時だった。
『カチッ』
いきなりドアの解が閉まるような音がしたので振り返ろうとしたが…。できなかった。なぜなら俺の首筋にいつの間にかナイフの刃が当てられていたからだ。
「アリス、どういうことだ」
「やめてくれる? お姉ちゃんとお父様以外にそう呼ばれると鳥肌が立つの」
そういうアリスからは初めて会った時と同じ雰囲気を感じた。
「わるい」
「まっ、いいや。これは忠告。もしお姉ちゃんに手を出したら許さないから」
「お、お前は何か勘違いしてないか。俺は別にエリスことをそんな風には…」
「嘘よ。男なんてみんな考えることなんて同じ。それに、お姉ちゃんのあの魅力に耐えられる男などいない」
「わ、わかったから、離してくれないか」
そういうとナイフが俺の首を放れる。
「ありがとう」
解放された俺はドキドキしながら後ろを振り返る。
するとそこには、光のない瞳でただこちらを見据え、右手にナイフを持ったアリスがいた。
「とにかく、そういうことだから…」
「あ、あぁ」
俺は返事をしつつ何となく右手で頭をかいた時だった。
「なっ」
アリスが何やらとても驚いた顔でこちらを見ていた。
「ん? どうした」
「あんた、その右手…」
そういわれ右手に目をやるとそこには…。
――― 召喚獣の刻印が浮かび上がっていた ―――
「な、なんで…」
俺が何事かと驚いていると再びナイフを突きつけられる。
「あ、あんた魔族だったのね」
「違う、俺は人間だ」
そうすぐに否定するが、とても話を聞いてもらえるような状況ではない。
「そんな言葉に私は騙されない。その刻印は魔王の召喚獣の刻印。誰がどう見たってあんたは魔族だ」
「違うんだって、俺は本当に、なっ…」
完全に俺を魔族だと思っているアリスは突きつけていたナイフをそのまま突き出してきた。
「やめろっ」
「お姉ちゃんに取り入ってこの国を支配しようとしてたのね、許せないっ」
「だから違うって」
俺はそう叫びながら二撃目、三撃目をかわす。
「死ねっ魔族っ」
右側から振り下ろされるナイフ。
俺は今攻撃されているので能力により悠々とそれをかわす。
(しかし、どうするか。反撃するわけにもいかないし)
「お姉ちゃんは私が守るっ」
今度は突き。
かわす。
すると、またもや大きく振りかぶった。
俺はその瞬間を見逃さない。
振り下ろそうとしている右手を俺は抑える。
「くっ、魔族が」
それでも抵抗して暴れるアリス。
「だから聞けって」
「誰が魔族の言うことなんて聞くか」
そういって空いている左手で殴ってくる。
俺はそれももう一方の手で受け止める。
「私を捕まえてどうするつもりだ」
「いや、何もしないけど…」
「嘘だっ! 捕まった私はこのあとこのまま押し倒されて、そのまま縛られて、あんなことやこんなことを…」
「しないからっ」
俺は彼女のとんでもない発言にそう言って、慌てた俺は抑えた手を放してしまった。
「ぐはっ…」
――― 次の瞬間、俺の腹からは黒色の柄が生えていた ―――
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




