第二章 王国篇 (8)
「すまない、海斗」
ザクロが去ったのを確認し、そういってくるエリ。
「別にいいよ、ここまで来るまでの時間とさっきの人との会話でだいたい理解したから」
「そうか、ありがとう。だが、あらためて説明させてくれ」
それに対し、俺は首を縦に振る。そして、事の始まりを語りだした。
「私は人間国最前線基地、港町のマリの視察に赴いていた。行きは船で行ったのだが、海の関係で帰りは
陸路から帰ることになったのだ。しかし、その途中でいきなり武装集団に襲われた。姿は山賊を模していたが動きは玄人の動きだった。故に、こちらもある程度の準備はしていたが私を逃がすのが精いっぱいということになってしまった。そして、その逃げている最中にあの魔獣に襲われ、お主に助けられたというわけだ」
「そうか…。あと、俺もこれからはリフィーア様って呼んだほうがいいのか」
「構わん、これまで通りエリ。いや、エリスでよい。もともとエリというのは少しでも私の存在がばれて
狙われることを防ぐためだったからな」
「わかった、ならそう呼ばせてもらうよ」
そういって話を切り上げようとすると「ところで」とエリスが続ける。
「お主は今日泊まる場所などなかろう。ここでしばらく休んでいくといい」
「いや、それはさすがにいいよ。身分の分からない奴が城にいるとかいろいろとまずいだろ」
そこまで言うと、「ふふっ」と笑みをこぼす。
「もしそんなことでお主を厄介払いするような奴がここにいたら、私が再教育してやる」
その言葉に俺も苦笑を漏らす。
しかし、俺は首を縦に振らない。
俺がしばらく渋っていると、それに耐えかねたエリスが腕をつかんできた。
「もう、じれったいぞ。とにかく行くぞ」
そういって城の方へと引っ張られ中へと連れ込まれてしまう。
「お、おい」
するとその時、城の中からものすごい物音というか足音が聞こえてきた。
『ドドドドドドドォォォォ』
「エリスおねぇーちゃーーーーーーーーーーん」
そう叫びながら一人の少女がどこからともなく飛び出してきた。
そして、その勢いのままエリスへと抱き着く。
俺はエリスに腕をつかまれたままなのでその衝撃がこちらまで伝わってきた。
「アリス、部屋以外ではお姉さまと呼ぶように教えただろ」
そういうと、俺の腕をつかんでいた手を解きアリスという少女の背中に腕を回し軽く抱擁する。
「心配かけたな」
「うえぇぇぇーーーお姉ちゃーーーん」
アリスはエリスの胸に顔をうずめながら鳴き声を漏らす。
そんな彼女をエリスはいつまでも慰めていた。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




