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第二章 王国篇 (7)


 一時間くらい待ち続けた後、ようやく次が俺たちというところになったところでエリが話しかけてきた。


「海斗よ。この一・二週間世話になった。実を言うと、私は君に嘘をついていたことがある。そして、この後もしかすると君に迷惑をかけてしまうかもしれない。だから、今ここで言わせていただく。すまない、そしてありがとう」


「え、どういう」


 いきなりのその言葉に俺が困惑していると、自分たちの番が来た。そして、エリは外套をはぎ取ると多

くの人に聞こえる声で叫んだ。





 ――― 私はスレべニア国第一王女、スリビア・エリス・リフィーアである。


                          父上に伝えよ、私は無事であると ―――





 エリの発言により、あたり一帯が大きくざわめき始めた。


「あ、あなた様は本当に姫様でらっしあるのですか」


 検査を行っていた衛兵が困惑しながらエリに話しかける。


「そうです。とにかく、上の者に知らせなさい」


 その言葉を聞くと、衛兵は「は、はいっ」と答え、まだ一体全体何が起きているのかという感じだったが全力で城へと向かって走っていった。


「と、とりあえずお城のほうまでお願いします」


「かまわん」


 そして、エリも衛兵の案内の元城へと向かう。


「何をしている海斗。お主も来るのだぞ」


 俺がいまだに呆けていると、そんなことを言われる。


「あ、あぁ」


 俺はエリの後についていく。

 城までの道では沿道の人達がいろいろな声をあげていた。


「姫様だ」「ご無事で何よりです」「姫さまー」


 ところどころでは頭を地面につけあがめるもの、声をあげて泣いているものもいた。

 しばらくして、城へと続く内門をくぐり城へとたどり着いた。


 内門というのは、ここは防衛上の問題で城壁が二重になっており、この門は二つ目の城壁を通るための門である。ちなみに一枚目、二枚目に城壁の外側には水堀が彫られている。

 城の大きな扉の前には一人の老人がいた。


「こ、これはこれはリフィーア第一王女様ご無事で何よりでした」


「ザクロ大臣、心配をかけた」


「いえ、護衛が甘かったばかりにリフィーア様を暗殺の危険にさらしてしまいました。この責任は私にご

ざいます。どうか、なんなりとお申し付けください」


 苦しそうな顔をしながらそういうと、頭を下げるザクロ。


「今はそんなことはどうでもいい。そんなことより、私を襲ってきた反逆者について調べ上げよ。お前に

席を問うのはすべてが終わってからにする」


「はっ。承知いたしました」


「それとリフィーア様。フランクスシア王の容体が怪しくなっておりますので、早めに挨拶をお願いいた

します」


 それを聞き、エリは少し動揺の色を見せるがすぐに調子を取り戻す。


「そうか、お父様が…。わかった」


 そこで、ザクロはエリの隣にいる俺に気が付く。


「あの、失礼ながらリフィーア様。そちらの方は」


「あぁ、こいつは海斗と言ってな私が逃げていた時に助けてくれたものだ」


 俺はそう紹介され一歩前に出ると軽く会釈する。


「…そうでしたか、この度は王女を守っていただき誠にありがとうございました。今回の件に関するお礼は

改めて正式な形でさせていただきたいと思います」


 その申し出に、俺は一度断ろうとしたのだがエリにそれを止められてしまった。

 この短い間でも一日中一緒に過ごしてきたため、ある程度俺の性格も理解されている。それ故に、俺の行動を先読みされてしまった。

 エリが言うには、一国の王女を守った者に何もお礼を与えないというのは体裁上問題があるのでもらっておくようにということらしい。


「ありがとうございます。謹んでお受けいたします」


 俺は自分の中でのそれっぽい言葉で答える。


(俺的には目立つのはいろいろとまずいんだけどなぁ)


その後、もう一度エリに対し彼はうやうやしく頭を再び下げると、城の中へと足早に戻っていった。




最後まで読んでいただけるだけで感謝です。


前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。

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