第二章 王国篇 (3)
砦を出た後は西の方へと向かう。
ちなみに馬や魔獣に乗っていかないのは、俺の特訓にならないからと、森の魔獣は急に現れるので地面に最初からいたほうが安全だからだ。
加えて、移動に関してもルーシーに教わった魔法により速く走ることができるので問題ない。
俺は襲ってくる魔獣を倒しつつ歩みを進める。途中、太陽が真上に来た頃に砦を出る直前にサナさんが渡してくれた弁当を食べ英気を養う。
普段ならこの時点で元来た道を引き返し、砦に帰るのだが、今日はまだ先へと進む。
さらに、今日は運もよくあんまり強い魔獣とも出会っていないので予想よりも早く行けそうである。
「フッ…」
俺はこちらにもう突進してくる巨大なイノシシのような魔獣をソードスラッシュで切りすてると一息つく。
(今日はここで休息するとするかな)
そう思い背中に背負っている荷物を下ろした時だった。
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
森の中に女性の悲鳴が響き渡った。
俺はそれを聞くと瞬時に「コンソライデート」をかけ走り出した。
「なんでこんな魔獣g…」
「作戦中止d…」
「うわぁぁぁーーーーーー…」
俺が声のしたほうに向かうと、体調七メートルはあろうクマのような魔獣五体が一人の女性を取り囲んでいた。その近くで既に、数人の人間だったものが転がっていた。
俺はサナさんと話した予想だと、何かを守ろうとする時しか強力な魔法を使えないのでこちらにタゲをもらうために、常時では使い物にならないくらいの強さのソードソニックを打つ。
「ハッ」
「ガルルルル」
すると、予想通りこちらに気が付いてくれた魔獣が攻撃を仕掛けてきたため、一回かわす。
「な、なにをしている」
タゲがこちらに向いたため、先ほどまで木を背に囲まれていた女性がこちらに気が付いた。
「なにって、声がしたから助けに来たんだが」
「これが何だか分かっているのか、逃げろ」
そう叫びながら何かやろうとしている。
(魔法でも放つつもりか? くそっ)
俺は悪態をつきながらもこのまま見捨てるのはあまりにも後味が悪すぎるので、彼女が余計なことをする前に終わらせることにする。
ちょうど次に襲い掛かってきた魔獣の後ろに連なる形でいたので魔力を一気に剣へと流す。そして…。
「ハァァッ」
剣を横に一閃した。
目の前に迫っていた魔獣はもちろん、その後ろにいたほかの奴らも上半身と下半身が離れ地面に落ちている。
「ふぅ。大丈夫か」
俺は剣を鞘にしまうと先ほどの女性に目を向ける。
「あなたは一体…」
そこで、彼女は気を失ってしまった。
その後、このままここに置いていくわけにもいかないのでとりあえず荷物を置いていたところまでもどり、テントを立てるとそこで彼女を寝かせることにした。
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




