第五編 聖都決戦編 第二章 獣の国(13)
転移の間に行くと、既にルーシーとスフィアが二人のことを待っていた。
「来たか。では、行くとしよう」
特に話をすることもなく、サナ達が到着するとすぐに転移の用意をする。
ルーシーとサナの関係性は未だに変化しない。
スフィアとは、作法を教わるため何回も顔を合わせていたおかげか、ある程度関係を戻せていた。
しかし、ルーシーとサナが顔を合わせると、何とも言えない雰囲気が流れるのだった。
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転移が終わると、目の前にはエリスとアリスが現れる。
「ようやく来たか。待っておったぞ」
「む? 時間通りのはずだと思ったのじゃが」
「いや、私が楽しみにしていただけだ」
「そうか。それにしても久しぶりじゃな」
「うむ。会えてうれしく思うぞ」
エリスとルーシーは、会って早々再会を喜ぶ。
そして、ふとエリスがサナに目を向けた。
「もしかして、君が海斗の…」
「はい。私が海斗の妻のサナと申します」
サナがそう言うと、エリスは足の先から頭までゆっくりとみる。まるで、値踏みでもするかのように。
「そうか。知っているかと思うが、私は第一王女で、現在女王のスリビア・エリス・リフィーア
だ。エリスと呼んでくれて構わない」
「はい、存じております。ですが、さすがにそれは致しかねますので、エリス様とお呼びさせていただきます」
サナは差し出された手を取りながら答える。
「ふむ、海斗の妻なのだからそこまでかしこまらなくてもよいと思うが…」
「お姉さま。プライベートの場ならまだしも、公の場では…。彼女にも立場というものがありますから」
サナが困っていると、アリスが助け舟を出す。
「それをアリスが言うか?」
いつも、場所に構わず姉に縋りつくアリスは、突然のブーメランに赤面する。
「でも、そうだな。では、好きに呼んでくれ」
「はい、ありがとうございます」
「うむ。では、儂らは先に行くとするかの」
「そうだな」
サナとあいさつを終えたエリスとルーシーは、国のトップとしての話があるためか、先に部屋へと歩いて行った。
部屋に残るは四人。
私達は、どうするのかしら。
転移したことで、パーティーがすぐだと実感したサナは、緊張からか不安が心を支配した。
すると、アリスが
「では、皆さんは私が部屋までご案内いたします」
そういって、残った三人はアリスの後に続いた。
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私達はそれぞれ別々の部屋に案内された。
「こちらがサナさんのお部屋になります」
「ありがとうございます」
最後に案内されたサナは、お礼を言いながらアリスに軽く頭を下げる。
「そういえば、まだ挨拶していませんでしたね。私は第二王女のアリスです」
「改めまして、サナです」
急な挨拶に、サナも慌てて挨拶を返す。
顔を上げると、アリスと目が合う。別に、目が合うことは変なことではないが、その目は、何か悩んでいるように動いていた。
「アリス様?」
「な、何かしら」
「いえ、何かあるのかなと…」
「な、何でもないわ!」
思わず口調が強くなってしまったアリスは、慌てて「ご、ごめんなさい」と謝る。
「い、いえ。私の方こそすみません…」
急に気まずい雰囲気が流れる。
「…」
「…」
先に口火を切ったのはアリスだった。
「私は、気軽によんでくれていいから。アリスって…」
「え、あ、はい」
「…また、後で話す」
それだけ言うと、急いで部屋を飛び出してしまったアリス。
そんなアリスの姿をポカンとしながら見送る。
と、思ったらすぐの戻ってきてドアから顔を出すアリス。
「パーティーはあと二時間後くらいだから」
それだけ言うと、サナがなにか言う前にドアを閉めたアリス。
「…はぁ」
アリスのよくわからない行動に、疑問符が消えないサナだった。
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