表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/151

第五篇 聖都決戦篇 第二章 獣の国(10)


「サナさんお疲れ様。まだご飯作ってないよね?」


「えぇ。これから作るところよ」


「良かった! じゃあ、今日は私が作るね」


 そういうと、両手に持っている袋を見せてくる。

 どうやら食材も持ってきてくれたようだ。


「そう、じゃあお願いするわね」


 そう返すと、私は再び椅子に腰を下ろした。

 ちなみに、これまでミクの食事はさなが作っていた。


 おそらく妊婦でもある私に、いつも作らせるのは申し訳ないとでも思ったのだろう。正直、私は今のところまだ大変というわけでもないし、職業柄家事が嫌いというわけでもないので、気にしなくてもいいのだけれど…。


 海斗と同じでミクも真面目な子だから、そういうところはしっかりとしたいのだろう。


 ミクがキッチンに行くのを見送る。



「…」







「さて、何をしよう。やることがなくなってしまった」


 サナ達の住む世界に、娯楽がないわけではないが、現世と違ってゲームなどがあるわけではない。時代的に例えるならば、中世と同じくらいといえば想像しやすいだろう。

 そんなわけで、手持ち無沙汰となってしまったサナは、自然と足はキッチンへと向かっていた。


「あれ、どうしたんですか?」


「いや、ちょっとやることがなくてね」


「いいんですよ、いつもサナさんは頑張っているんですから」


「んー、でも…」


 そんなサナに、ミクは顎に手を当て少し考えてから。


「そういえば、サナさん本読むのがお好きじゃないですか。本は読まないんですか」


「部屋にあるものはほとんど読んでしまったわね。書庫の本はまだ読めてないのがたくさんあるけれど、持ち出しは出来ないから」


 どの時代においても、知識というものは非常に重要なものである。その塊ともいえる本は、重要なものは国で厳重に管理されているのだ。


「あー、そうなんですね」


 あんまり本を読まないミクは、書庫のことなどは知らなかったようで改めて考えるそぶりをする。

 そして、数秒の後「あっ」となにかを閃いたと人差し指を立てる。


「なら、お裁縫とかどうですか?」


「お裁縫?」


「はい! これから赤ちゃんとか生まれたりしたら、お洋服とか買うんじゃなくて、サナさんが作ったのを着させるとか。どうでしょうか?」


「なるほど…」


 確かにそう言うのもいいかもしれないわね。

 家事とかこれまでいろいろやってきたけれど、裁縫はあんまりやってこなかったし、この機会に初めて見るのもありね。


「少し、やってみようかしら」


「はい! ぜひぜひ。あ、もし手伝えることがあったら言ってくださいね。私も少しだけですが、

向こうの世界でやっていたので」


 へぇ、本当に家事全般は何でもできるのね。それで、且つ戦闘能力も持っている。ほんと未久が義妹でよかった。


「えぇ、そうするわ。けれど、今日の所はここでミクのことを見ていることにするわ」


 私は、心情を隠しつつそう声をかけると、ミクは恥ずかしそうにしながらも調理に戻った。

 正直、パーティのことを考えると憂鬱でしかない。只、今こうやって誰かといることで、ミクといることで、心が自然と落ち着いていた。

 



最後までお読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ